設置者指導の必要性

岩手県花巻保健所
伊澤 昌弘


 私が保健所に入り、し尿浄化槽に関する仕事についてから10年が過ぎました。
 この間、多くの浄化槽の顔色を伺ってきましたが、1つ1つの”性格”が異なり、適正な管理について指導することの難しさを感じてきました。
 また、法律に定められた基準によってきちんと設置された浄化槽でも、設置者が無関心なため、消毒も清掃もしないまま数年間使用したことから苦情となって表れたものにめぐり会ったり、維持管理は業者がやるものと決めつけて無関心なため、塩素系の洗剤について注意してもなかなか聞き入れてもらえないこともありました。
 そこで、花巻保健所では設置者(事務所等は管理担当者)を対象とした「維持管理講習会」を昭和56年度から実施してきました。
 内容は①浄化槽に関する法律について②浄化槽のしくみ③維持管理上の注意点などですが、パンフレットを使って2時間位の日程で行ってきました。
 その講習会の参加者に対して行ったアンケートの結果は、別表のとおりですが、85%の施設が管理を専門業者に依頼しているものの、放流先がどこか知らない管理者が20%もあることや、記録を保存していない施設も約37%あることがわかりました。
 浄化槽の機能が発揮されるためには、設計・施工・維持管理の3つの要素が適正に行われなければならないことは今さら申すまでもありませんが、一般的に建物を建てる時には、設計・施工の手続や、浄化槽の機種選定・規模等について専門家に決定をまかせる傾向にあります。このことは、自分の所の浄化槽の処理能力を知らないという人が35%もあるというアンケート結果からも推定出来ます。
 しかし、設計や施工が全く計画通りでない場合は別として、多少設計値と異なる使用状況になった場合でも、基準以下の放流水を得るためには維持管理部門に大きな責任がかかることになります。
 維持管理について設置者も十分に関心を持ち、管理を委託していても、専門業者が管理に来た時にはきちんと立会い、不明な点を質問し、使用方法について相談していくことが必要であると考えられます。
 このことは、協会の会報第6号に検査員の高橋豊さんが「設置者との対話」と題して意見をのべていたことと同じです。
 私たちは、設置者に対してこれからも、講習会を通じて維持管理の重要性を訴えていきますので、管理に当るみなさんも、設置者に対して管理状況を説明し、理解させるよう努めていただきたいと思います。
 協会のみなさんとはこれからも一緒に仕事をしていくことになりますのでよろしくお願いします。