浄化槽法について

岩手県江刺保健所
立花 一


 昭和59年9月、東京に於て行われた浄化槽指導者研究協議会に出席しましたが、浄化槽法(以下法という)に関して、これまで出された告示、省令等についての説明がありましたので、主として浄化槽の管理に関するものの概略について述べたいと思います。

◎浄化槽の定義(法第2条)
 以前のし尿浄化槽では浄化槽本体を指すだけであったが、法ではさまざまな付属機器を含むとされている。

◎浄化槽設備士
 浄化槽工事業を営む者は、浄化槽設備士を設置し登録を受けなければならないが、建設業法に基づく登録を受けている場合は、法に基づく登録は必要ないが、設備士は設置する必要がある。
 設備士免状の取得は法第42条第1項第1、2号に基づくもののほか、附則第7条に基づくものの3通りがある。
 また、試験等の実施団体は、新たに設立される予定である。

◎水質検査等
 法第7条に基づく6ヵ月検査及び第11条に基づく定期検査については、厚生省令がまだ出されていないが、BODを入れるかどうかを検討中であり、今までの制度(廃掃法施行規則第4条の2第3項第20号)をなるべく生かす方向で進められている。
 また、検査の結果不適正であっても、保守点検または清掃に関するものでなければ、第12条に基づく命令等は適用できない。

◎浄化槽管理士
 内容的には今まで行っていた環境整備教育センターの管理技術者講習会Aコースを発展させたものである。
 管理士免状の取得は法第45条第1項第1、2号に基づく試験、講習会によるもののほか、附則第8条に基づく講習会の3通りがある。(附則に基づく講習会については、昭和59年8月に厚生大臣が指定を行っている。)

◎管理
 今までの維持管理基準を発展的に解消し、施行規則で使用に関する準則及び保守点検の技術上の基準が設けられた。
 法第10条第2項で技術管理者について定められているが、資格要件については、まだ省令が出されていない。技術管理者の行う業務は、保守点検、清掃を含み、管理士の行う業務よりも広くなる。
 保守点検を業とする者は、条例で登録制度が設けられた場合は、登録を受けなければならなくなる。また、登録制度が設けられない場合は、浄化槽管理士がそれを行うことになる。

◎保守点検の回数の特例
 施行規則第5条で、単独、合併それぞれ型式ごとに「通常の使用状態」での回数が示されている。
 「通常の使用状態」とは、
 ○特殊廃水の流入がないこと
 ○槽の傾斜がないこと
 ○機能が発揮できないような状況において使用されていないこと
 ○流入汚水量が適正であること
 ○適正な処理人員であること
 ○生物処理に適した温度であること
などが考えられている。

◎清掃回数の特例
 施行規則第6条で全ばっ気方式の浄化槽の場合、通常の使用状態において、3ヵ月ごとに1回以上清掃することが義務付けられた。これは、汚泥発生量から推定して、汚泥流出を防ぐために必要な回数なためである。

◎質疑応答(答は厚生省)

問 法第51条の所要の援助とはどのようなものを指すのか。
答 一口では言えないが、一つの方法として金融公庫等の紹介などが考えられる。
問 浄化槽で補助を受けて建設するものもあるが、今後、その位置付けはどうなるか。
答 浄化槽は廃掃法からははずれるが、補助についてはこれからも一般廃棄物処理施設として扱う予定である。(コミュニティプラント等)
問 法第48条で、条例で保守点検を業とする者の登録について定めることができるとされているが、条例で無登録者の罰則を定めることができるか。
答 可能である。  
問 保守点検の登録業者に、営業の区域を限定することができるか。
答 条例については、モデル条例を示す予定だが、それと併せて検討している。
問 保守点検を業とする者の登録について条例が制定されていない場合、浄化槽管理士のいる会社に対して保守点検を委託できるか。
答 会社に委託はできない。浄化槽管理士に委託するべきである。
問 排水の出ない循環式の浄化槽の扱いはどうなるか。
答 法に基づく浄化槽ではないが、廃掃法の一般廃棄物処理施設としての規制を検討中である。
問 市独自で「浄化槽管理条例」を制定し許可制をとっているが、今後どのように取り扱うべきか。
答 法と照らし合わせ、法に反しないのであれば存続させることは可能である。
問 特定施設のある事業場で、浄化槽の排水を更に特定施設からの排水とあわせ、排水処理施設へ入れて処理している場合、浄化槽法上どのように取り扱うべきか。
答 原則として、排水処理施設も法の適用を受ける。
問 付加装置として、三次処理装置がついている場合、どのように取り扱うべきか。
答 三次処理装置も法の適用を受ける。
問 全ばっ気型の浄化槽において使用人員が1人~2人でSVが60になっていなくても3ヵ月に1回清掃しなければならないか。
答 「通常の使用状態」とは考えられないので清掃回数の特例は適用されない。
問 全ばっ気型の浄化槽の3ヵ月に1回の清掃に伴う抜取汚泥量の増加に対して、どのように対応するのか。
答 一般廃棄物であるので各市町村で対応することになる。
問 家庭用の合併処理浄化槽が開発されているが、実用化の見通しはどうなっているか。
答 今後、検討していきたい。
 以上のような説明、質疑応答があったわけですが、なにぶんまだ出されていない政令、省令も多く、不確定なところがあることをご了承願います。
 最後になりましたが、協会員の皆様、今後ともよろしくお願いします。