岩手県宮古保健所
佐々木 竹美
浄化槽法の全面施行が60年10月1日(制定は58年5月)ですので、早くも2年経過しました。
最近の動きとしましては、厚生省の中に浄化槽対策室が設けられましたし、小型のものをも含む合併処理浄化槽に対する国庫補助制度も始まりました。
人口的に見ますと、下水道30%、浄化槽30%、汲み取り40%という事実、下水道建設費が高価であること、そして、雑排水による中小河川の汚濁等々の理由によるものでしょうか、浄化槽行政の動きが大きくなってきていると感じているところです。
このたび寄稿の依頼を受けましたので、浄化槽法施行前と施行後を比較しながら、浄化槽行政の一端を担う保健所の役割を考え、これに対して皆様のご批評をいただけたらと思う次第です。
浄化槽法施行前の問題点を列挙しますと、
(1) 浄化槽の設置基数に対して、保健所のマンパワーが不足していた。そのため、監視、指導が十分でなかった。
(2) 一部の施工業者に技術的問題があった。
(3) 浄化槽の保守点検業者に技術的問題があった。
(4) 浄化槽設置者の浄化槽に対する知識・意識が欠けていた。
―等の問題点があったと思われます。
浄化槽法施行後は
(1)について
7条・11条検査制度となり、保健所のマンパワー不足をカバーすることとなった。
(2)について
浄化槽設備士制度となり、一定以上の施工技術が確保されることとなった。
(3)について
保守点検の委託を受けるには、岩手県に登録していなければならない。加えて、浄化槽管理士が保守点検に当たらなければならないこととなった。
(4)について
このことについてが最大のポイントであろうかと思います。
ちょっと脱線しますが、浄化槽メーカーは、「研究を重ね、高性能のものが出来た。設置してみたら」とのことでありますが、性能を表す除去率なるものは、よく考えてみますと、いくらか出るということであります。また、時としては、生がそのまま出ることもあるものでもあります。
浄化槽設置者は、浄化槽工事業者の薦めもあってか、あるいは、第六感で感じてか、排水口は通常では見えない、あるいは見えにくい構造としているのが普通であります。このことは、浄化槽設置時の意識を低下させることであります。
さて、(4)についてですが、浄化槽法施行前に比して改善されたとは言えないのではないかと思います。浄化槽設置者の浄化槽に対する知識・意識を高めるためには、否応なしに処理水が見えるようにしたらと思うのです。トラブル発生時には、自分が手をかけねばならない気持ちにさせる構造というのではないだろうかと思うのです。
実例として、中水道というものはどうでしょうか。
トラブルにより処理水質が悪化していると、自分が不快になります。まあ、処理水を着色して使用するという手段は対応策として出てくるわけですが。例えば、『処理水は排水口までの間、処理水質が見えるように最も短くて3m以上の開放形水路としなければならない。』というのはいかがでしょう。
新しい年を迎えて、まったく実現不可能な夢を見てしまったようですが、標題の『浄化槽の担当として何をすべきか』ということであります。
浄化槽について意識の低い方々に11条検査を受けるよう、牛歩のごとくではありますが、指導していくことであろうと思われます。
7条・11条検査を全浄化槽が受ける。その検査結果を保健所が把握し、不備のあった浄化槽を指導改善していく。このことが、環境保全に通じ、ひいては、浄化槽の社会的地位の向上、普及に結びつくものと考えます。
おわりに申し上げたいことは、保健所を利用して下さい。期待に応えられるかどうかわかりませんが、対応させていただきます。
立場の違いはあるとしても、住みよい環境作りに一緒に進んでいけたらと思っております。