浄化槽の保守点検について

岩手県環境保健部生活衛生薬務課
佐藤 保彦


 私は昭和63年度から浄化槽関係事務を担当することになりましたが、初めての分野でもあり、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
 さて、今般、浄化槽行政について寄稿依頼がありましたので、浅学ではありますが、浄化槽保守点検業者の登録制度を中心に紹介させていただきます。
 浄化槽は、し尿等の適正な処理を行い、生活環境の保全や公衆衛生の向上を図るため設置されており、生活様式や住環境に対する意識の変化に伴い、その普及率は年々高まってきています。
 また、その性能をかつてのものとは比較にならないほど向上してきており、近年注目を集めている小型合併処理浄化槽は下水道の終末処理場と同等の処理能力を示しております。
 しかし、高性能の浄化槽も、設置や維持管理が不適正な場合にはその機能が発揮されず、十分に処理されない汚水が放流され、水質を汚濁する原因となっている例がしばしば見受けられます。
 浄化槽の適正使用を確保するため、浄化槽法(昭和58年法律第43号)により設置や管理に関する様々な基準や、専門的な知識と技術を要する各種の資格が規定されています。
 このうち保守点検については、技術上の基準に従って、厚生省令で定められた回数以上実施することが義務づけられており、資格を有する技術管理者を置いて行うか、保守点検業者登録制度が設けられている場合には当該登録業者、制度が設けられていない場合は浄化槽管理士に委託することとされています。
 岩手県では、浄化槽の保守点検業者の登録に関する条例(昭和60年条例第30号)により登録制度が設けられていますので、浄化槽の保守点検を行う事業を営もうとする者は知事の登録を受けなければなりません。
 この登録制度の概要は次のとおりです。
○登録の有効期間
 ・3年間
○登録の主な要件
(1)次の事項に該当しないこと
 ・法令等に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者
 ・登録を取り消され、その取り消された日から起算して2年を経過しない者
 ・事業の停止を命じられ、その停止期間が経過していない者
 ・役員のうちに上記の一に該当する者がある法人、または法定代理人が上記の一に該当する者
 ・申請書等の重要な事項について虚偽の記載があるとき、または重要な事実の記載が欠けているとき
(2)次の要件を満たしていること
 ・県内に営業所を設置していること
 ・保守点検業者の専属である浄化槽管理士を置いており、かつその浄化槽管理士は営業所ごとに専任であること
 ・規則で定める器具を備えていること
○保守点検業者の主な責務
 ・浄化槽の保守点検を行うときは、浄化槽管理士がこれを行うか、又は実地に監督しなければならない。
 ・保守点検を行った場合において、清掃が必要と認められたときは、速やかに当該浄化槽の管理者等に通知しなければならない。
 ・登録事項に変更があったときは届け出ること。
 ・保守点検の実施状況を毎年度報告すること。
 ・帳簿を備え付けておくこと。
○登録手数料
 ・2万5千円

 次に、最近の登録申請や浄化槽関係の調査等により気がついたことについて紹介します。
○登録申請の際に、保守点検業を営む区域が広域となっている例があります(県下全域等)。
 保守点検は、一人の浄化槽管理士が実施できる範囲は限度があること、清掃や汚泥の処理など地域内での連携が必要となることなどから、特定の地域で計画的に行うことが適当と思われますので、営業範囲を能力以上に設定することは望ましくありません。
○保守点検業は、清掃業との兼業で行われている例が多くみられます。
 これは、保守点検結果に迅速に対応できるなどメリットも多いのですが、一方で保守点検がおろそかになりがちな傾向もみられます。浄化槽の機能を常に発揮させるためには、清掃のほかに定期的な保守点検を的確に行う必要があることを忘れてはなりません。
○定期検査などにより管理基準不適合とされるもののうち、保守点検の回数が少ないもの、あるいは全く行われていないものが多くあります。
 検査機関との連携や、顧客名簿の整備などにより、定期的な保守点検の実施を促進することが必要です。
 また、法定検査で毎回不適正と判定される浄化槽がありますが、そのまま放置することなく管理者、検査機関及び保健所と連携のうえ、原因を調査し的確な改善策を早期に講ずるようにしてください。

 浄化槽法と浄化槽の保守点検業者の登録に関する条例は、いずれも昭和60年10月に施行され、保守点検業者の登録もこの時期から実施されています。
 従って、早い時期に登録を行った保守点検業者は、まもなく登録期間が満了となりますので、無登録営業とならないよう、早めに更新の手続きを行ってください(満了時の約1ヵ月前に申請願います)。
 以上、保守点検について簡単に紹介してまいりましたが、疑問点や不明の点があるときは、最寄の保健所または県庁生活衛生薬務課まで御照会願います。

 現在、全国的に生活排水による公共水域の汚染が大きな社会問題になっています。
 後世に清純な環境を伝えていくための重要な役割の一翼を担っているとの認識を深め、関係者が一体となって浄化槽の適正使用に取り組んでいきたいと思います。