盛岡保健所
荒谷克己
皆様、新年明けましておめでとうございます。
私は、平成6年度から盛岡保健所で浄化槽の担当をしておりますが、浄化槽の仕事を直接担当するのは、初任地の大東保健所以来12年ぶりでした。昔と比べると、浄化槽をとりまく状況もかなり変化しており、最初は戸惑うところもあったのですが、現在はなんとかやっています。
今回、浄化槽協会の高橋課長さんから浄化槽についてなんでもいいから書いて欲しいと頼まれましたので、盛岡保健所で浄化槽を担当して常日頃浄化槽について感じていることを思いつくままに述べてみたいと思います。
1.盛岡保健所は浄化槽の数が多い! しんどい~
平成6年度末で県内の浄化槽の設置基数は21,005基とされていますが、当所管内には4,962基設置されており、全基数の約4分の1が管内に設置されています。しかも昨年は、622基の設置がありこれは平成5年度末の大東保健所の設置基数652基とほぼ同じ数量で前年度比14%の伸びとなっています。浄化槽の仕事は土木事務所と盛岡市からの照会に回答するだけでなく、人槽算定の相談も多く、通常の浄化槽監視はほとんどできない状況にあります。今年度は市町村ごとに担当を分けて業務の軽減化を図っています。
また、11条検査等による不適事例も多く、平成6年度は121基となっています。当所の業務量からはこれらの不適施設全てに立ち入り検査を実施することは困難なため、今年度からは、即文書により改善を求めることとし改善勧告の文書を乱発?しています。
浄化槽は設置から管理まで法律で細かく規制されており、本来は保健所であまり深く係わらなくても問題なくいくはずなのになぁ~、保健所の業務を軽減するような手だてはないものか?と考えています。
2.浄化槽保守点検業者について
実は私は浄化槽管理士の資格を持っています。これは、浄化槽協会の理事でもある伊澤県議が二戸保健所に勤務していた際、私も一緒に仕事をさせてもらっていたのですが、この時丁度浄化槽管理士の制度ができたのでした。そこで私が『保健所の環境衛生指導員は浄化槽管理士の資格くらい取れる』と主張し、『そう簡単にはいかない』という伊澤さんと賭けになったのでした。私は私費で仙台まで行って試験を受けて資格を取得したのでした。あの時の賭けは、私が合格すれば伊澤さんが次の年に浄化槽管理士の試験を受けるというものでした。その後伊澤さんは組合の専従となり市議会を経由して県議となったため幻の約束となってしまいましたが忘れがたい思い出となりました。伊澤さんありがとうございました。
さて、昔は保守点検業の登録制度はなかったので業者の実力は管理する浄化槽の状態で推定するしかありませんでした。平成6年度は新規更新含めて、25業者の登録申請があり、登録事業所の検査を実施しました。現地の検査に行って驚いたのはpHメーターやDOメーター、テスター、メガチェッカー等の機械器具が正常に作動しない業者が非常に多かったことです。保守点検業者の皆さん、浄化槽管理者は皆さんに依頼するしかないわけですので国家資格者のプライドを持って管理にあたってもらいたいと思います。
また、登録業者のなかには登録期限が切れるのも知らずにいる業者もおり、自覚を持って営業してもらいたいと切実に思いました。
3.小型合併浄化槽について
小型合併浄化槽の登場により、特に下水道の未普及地域における生活排水処理の切り札として浄化槽が脚光を浴び、国庫補助が拍車をかけて一般家庭用の小型合併浄化槽の設置基数が伸びていますが、中には住宅団地の1戸1戸に浄化槽が付いているという例があります。これはいかがなものでしょうか。浄化槽のような高度な処理施設を1戸1戸に設置し個々に施設管理を行うというやり方はあまり勧められるものではないと考えます。個別処理よりも共同処理施設に優先的に補助するような制度があるべきではないかと考えています。
4.おわりに
浄化槽は下水道への切り替えまでの過渡的な施設であるという考えがあります。しかし、私は少なくても20年、地域によっては30年50年場合によっては永遠に浄化槽が生活排水の処理施設としての機能を果たさなければならないのではないかと考えています。浄化槽の管理にかかわる者の責任は当分なくなりそうもなく、いっそうの努力が必要と考えています。
浄化槽の新構造基準には、BOD10ppm(mg/l)以下のものや脱窒素型のものが含まれるようですが、今後は特に窒素除去型や燐除去型の施設の普及に注目しています。
新年早々、苦言めいたことをいい、また、意を表現できなかったところも多かったと思いますが新年のめでたさに免じてご笑読願えれば幸いです。
関係者の今後のいっそうのご努力により浄化槽の管理がうまく行われ、公共用水域の水質保全が推進されることを祈念しまして筆を置く(実際はキーボードから手を離す)こととします。