21世紀は合併処理浄化槽の世紀

岩手県水沢保健所衛生環境課
主任 山 本 まき子


 昨年の6月、岩手県環境保全課から来た文書を見て浄化槽担当者は「ヤッターッ」と声を上げて喜んだ。ついについに単独処理浄化槽がなくなるのだ。これはわれわれ環境衛生行政に携わる者にとって長年の悲願でした。
 単独浄化槽の設置届が出てきて何とか設置を思いとどまってもらおうと電話しても、病床の老父に快適な暮らしをさせてやりたい、何とかお願いしますと逆に頼み込まれてそれ以上は何も言えませんでした。
 岩手県は全国に誇るもののひとつに非常に高い合併処理浄化槽の新設設置率があります。これは各市町村の補助金に対する積極的な取組と設計業者、浄化槽設備業者の協力の賜物でしょう。しかし、残る数件の単独浄化槽新規設置をなくすことができない。われわれの努力だけではどうしようもなかったのです。
 河川の汚濁の原因は生活雑排水によるところが大きいと呼ばれて久しいのですが水洗化はなかなか進みません。
 岩手県では「全県域汚水適正化処理構想」なるものを策定し、平成22年度までに水洗化人口を全県民の80%と目標を立てているそうです。しかし、公共下水道、農業集落排水の普及にも限界があり、そこで注目されているのが合併処理浄化槽です。少ない予算で効率よく水洗化を進めるには合併浄化槽が一番と見直しがかけられています。岩手県ではまだ普及していない特定地域生活排水処理事業も今後期待されるところです。隣の秋田県山本郡二ツ井町では事業がすでにスタートしています。私は行ってみませんでしたが、市町村の担当者が視察してきたのでその概要を又聞きで書きますと、指定地域内に設置される個々の合併浄化槽本体の設置を町が行い、工事費用の1割(事業所の場合は4割)を設置者が負担する。維持管理は町の委託業者が行い設置者は使用料を支払うというものだそうです。従来公共下水道等に比べて設置費用・維持管理費用が高いと敬遠されがちだった合併浄化槽の設置ですが、これによって公共下水道との格差がなくなり水洗化が一気に進むと思われます。岩手県でもいくつかの市町村で来年度からスタートするそうで、いくつかの問題点もあろうかと思われるが、今後取り組まれる市町村が増えることを望みます。
 そしてもうひとつ事業系の排水対策にも何らかの救済制度があればよいがと思います。家庭の生活排水対策と違って、事業系の排水については低利融資はあってもほとんどの市町村では補助金の対象にしていないと思います。もちろん事業所は汚水対策は事業所の社会的責任に基づき自らが行わなければなりませんが、中小企業についてはそう言っていられません。法律的規制もなければ補助金もない。当保健所でも頭を悩ましているのがラーメン屋の排水苦情です。合併浄化槽の設置を指導しても排水の汚濁負荷がきわめて高いため小さな店舗でも家庭用の小型合併では間に合わず、設置費用は膨大なものとなる。それが垂れ流しとなるのだからたまったものではありません。何かよい制度はないものでしょうか。
 我が子がまだ赤ん坊だったころ我が家はまだ水洗化していなくておむつを洗うたび汚水が河川に流れることを申し訳なく思ったものです(もっとも今は布おむつはほとんど使われないらしいからそちらの心配はない。)。今は我が家は合併浄化槽ではないが水洗化となり気持ちよく洗濯水も流せます。
 21世紀はどうなるのでしょうか。必ずしも明るい話題ばかりではないが、少なくとも単独浄化槽の廃止は福音です。美しい環境を望むのはみな同じ、会員のみなさまの協力で浄化槽(といえば合併浄化槽)の普及がさらにさらに進むことを願います。
 最後になりますが、私も浄化槽に関わって4年、岩手県浄化槽協会のみなさま、特に岩手県浄化槽検査センターの検査員のみなさまに助けられてここまでやってこられたことを深く感謝申し上げて稚拙な筆を置きたいと思います。