合併処理浄化槽のさらなる普及に向けて

岩手県環境生活部資源循環推進課
 廃棄物対策係 主事 高橋健志


 新年明けましておめでとうございます。(社)岩手県浄化槽協会及び関係者の皆様にはいつも大変お世話になっております。
 私が県庁への異動と共に浄化槽担当となってから、早いもので2年近くが経とうとしています。昨年度は補助金事務、今年度は特定地域生活排水処理事業(以下、特定事業と略)の事務指導を中心に担当しています。補助金事務などでは市町村及び保健所担当の皆様にはいつもご迷惑をお掛けしており、この場を借りてお詫び申し上げたいと思います。
 今でこそ各種会議等で「合併処理浄化槽の整備推進」などと声高に主張しているわけですが、担当になった時はその存在すら知らず、その名前を聞けば「合併」の意味がわからないなど、はなはだ心許ない状態でした。もっとも、今でも構造的な話となると、とたんに無口になってしまいますが。
 今回は、事務を通じて日頃感じていることについて書かせていただきます。

1.汚水処理施設整備率
 あまり話題になりませんでしたが、平成13年度末をもって、ついに本県の汚水処理施設整備率が50%を突破しました(正確には53.2%)。これは、本県においても過半数の世帯で水洗トイレが使用可能、すなわち「水洗トイレは県民の常識」という時代の到来と言えるのではないでしょうか。
 そのうち合併処理浄化槽による整備は8.4%、約12万人の県民が合併処理浄化槽を使用しています。整備率としては、公共下水道に次ぐものです。
 しかしながら、深刻化する不況の影響か、ここ数年、個人設置型の補助事業による整備基数は伸び悩みが見られます。

2.特定地域生活排水処理事業
 平成13年に浄法寺町、胆沢町を皮切りに開始された本事業は現在9町村において実施され、来年度は更に複数の町村が導入予定です。本事業は市町村自らが浄化槽を設置することから、浄化槽の計画的・面的整備が可能であり、また住民負担額が小さく維持管理を市町村が行うなど、住民のメリットも非常に大きいことから、各町村によって差はあるものの、事業導入後の整備基数は飛躍的に増加しているところです。
 国においても本事業を積極的に推進しており、平成15年度は昨年度比347%の予算が計上されており、また地域要件の大幅緩和が検討されています。
 各市町村におかれましても導入について、ぜひ積極的に検討していただきたいと考えています。

3.水洗化所感
 私の実家が初めて水洗化されたのは、9年前のことです(浄化槽ではありませんが)。高校卒業までは「自宅は汲み取り便所、水洗トイレは外で使うもの」が当たり前であり、特に不便は感じなかったものです。しかし一度使用すると「こんな優れた設備はない」と感じるようになり、汲み取り便所の使用はためらいを覚えました。就職してからはアパート暮らしを続けていますが、水洗トイレ(簡易水洗は論外)は入居の最低条件の一つとなっています。今では「自宅のトイレは水洗」こそ当たり前です。
 現在、実家に帰省したがらない子供が増えていると言われています。その大きな理由として「田舎のトイレが怖い。」が挙げられています。確かに快適な水洗トイレに慣れた目には、汲み取り便所は不気味に映るかもしれません。「夏休み前に特定事業で浄化槽を整備したら、孫もホタルも戻ってきた」という日が来ることを期待しています。

4.おわりに
 本県の「新・全県域汚水適正処理構想」の目標中間年度まで、気付けばあと2年です。今のところ何とか年度ごとの目標をクリアしますが、今後は集合処理の伸び悩みが懸念されることから、さらなる浄化槽の整備が必要なのは言うまでもありません。  (社)岩手県浄化槽協会においては、昨年新事務所も落成し、更に検査体制が整備されたことと存じます。今後も本県の「みず」環境保全のため、皆様の益々のご活躍と合併処理浄化槽のさらなる普及を祈りつつ結びとさせていただきます。