岩手県北上保健所
環境課 菊地やよい
新年明けましておめでとうございます。社団法人岩手県浄化槽協会及び会員の皆様には日頃から多大なる御協力を賜わりまして深く感謝申し上げます。
今回初めて寄稿依頼を受けまして、浄化槽担当者の立場から浄化槽について思うことを振りかえってみたいと思います。
1 はじめに
私が初めて浄化槽担当になったのは、思い起こせば新採用として大船渡保健所に配属された5年前。恥ずかしながら、その時に初めて浄化槽という言葉に触れ、ほぼ知識ゼロからのスタートでした。当時は上司の助けを借りながら仕事を進めていましたが、とにかく建築図面を見るのも初めて、トレンチやらインバートやら慣れない建設系の専門用語も多く、最初のうちは浄化槽というもののイメージがなかなかつかめずに苦労したことを覚えています。結局は実際に自分の目で現物をみたことが一番の理解につながりました。その際には、浄化槽検査センターの方や維持管理業者の方々からいろいろと教えて頂き感謝しております。今では「浄化槽ってこんなにも優秀なものなんだよ!」と自信を持って言えます。
2 日頃の浄化槽業務から
先日、法定検査で不適正であった現場を、保守点検業者の方と一緒に周った時のことですが、業者の方が浄化槽の維持管理の苦悩について話していました。
近年、浄化槽の型式は次々に新しいタイプが認定を受け製造され、最近では生物ろ過、担体流動タイプが主流になっているところですが、メーカーや型式ごとに保守点検時の操作方法が異なることから、日々勉強だという話でした。また、浄化槽の機能回復について疑問が生じ、メーカー側に相談しても、適切なアドバイスが得られなかったりと、浄化槽の機能回復に苦慮している例もあるようです。その際には様々なタイプを見て経験豊富な検査センターの方に相談されてみてはどうでしょうか?良いアドバイスが得られると思います。
3 全国浄化槽研究集会に参加して
昨年の10月、山形市で開催された全国浄化槽研究集会に参加してきました。全国各地の浄化槽関係者が集結し、研究発表や市町村の特色ある生活排水対策、法定検査のあり方等広範囲に渡る講演を聞くことができ、とても勉強になりました。私が特に印象に残った話題を2つ紹介したいと思います。
一つ目は岐阜県で実施している浄化槽維持管理システム「らくらく一括契約」というもので、一定間隔で3業種(清掃、保守点検、法定検査)の実施月を設定し、3業種一括した契約を行なうものです。メリットとしては、法定検査受検率の向上、設置者の料金支払いの簡素化、3業種の連携強化による浄化槽の維持管理が期待できます。
2つ目は、福島県の事例で、浄化槽の事務権限が市町村に委譲されたことをきっかけに、行政で管理する浄化槽台帳と法定検査機関で管理する法定検査データベースを一元化し、両者によるデータベースの共有化を図ったものです。今後は設置者、メーカー、保守点検業者、清掃業者、製造業者まで含めた管理システムの構築を目指し、最終的に設置者がデータベースにアクセスし、適正に運用されているかを確認できるシステムにする必要があるとのことでした。課題としては、個人情報の保護やIT環境の整備等が挙げられましたが、浄化槽機能の適正維持の為には、設置者、行政、メーカー、維持管理業者間の連携体制が重要だと感じました。現在、当保健所でも浄化槽設置者データの台帳整理を行なっているところですが、予想以上に検査センターで把握している台帳との不一致が多いというのが現状です。将来的に台帳の共有化をする上でも、このずれを解消することが今後不可欠な作業になると思われます。
また、最終日のシンポジウムでは、浄化槽がなかなか定着しない要因として、浄化槽使用者側の認識不足が挙げられました。トイレやシンク等のCMはあっても浄化槽のCMは見たことがないように、一般住民向けのPRが不足している。使用者の疑問に誰が答えてあげるか?という視点に立った設置者向けのかみくだいた説明の必要さを痛感しました。
4 おわりに
今あるすばらしい岩手の環境を次世代に引継いでいくために、私達にはやらなければならないことがたくさんあると思います。その一助となるべく浄化槽は、私達にとても身近な存在であり、本体は小さくてもその効果や役割はとても大きいものです。今後もより多くの方々に浄化槽を理解して使用してもらうために、関係機関の方々と連携を図りながら、浄化槽業務に関わっていきたいと思います。今後ともご指導のほどよろしくお願いします。