「浄化槽所感」

岩手県環境生活部
資源循環推進課資源循環担当
主事 上野 敏弘


 まずもって、このたびはこのような寄稿の機会を与えてくださったことについて感謝を申し上げますとともに、貴会及び会員の皆様におかれましては、本県の浄化槽行政全般に関して、日頃から並々ならぬ御尽力、御協力をくださり、心から御礼申し上げます。

 また、去る6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震により、県内の一部の地域では浄化槽に関する被害が確認されていますが、貴会におかれましては、被害状況の把握や復旧に向けた取組みについて迅速に御対応いただいているところであり、重ねて厚く御礼申し上げます。

 私は浄化槽関係の業務を担当してから、今年度でまだ3年目と、知識も経験も会員の皆様と比較して少ない訳ではありますが、僭越ながら以下に普段感じていること等を記させていただきます。

 本県の汚水処理人口普及率は、平成18年度末時点で67.3%と、全国平均の82.4%を大きく下回り、都道府県別の順位でも34位と低位に属しています。

 また、県内の市町村別で見ると、平成18年度末時点で最も高い市町村と最も低い市町村の差は70.4%と、ここでも大きな差が生じています。

 これらに共通することは、大きく分類すると都市部が比較的高く、それに対して山間部は比較的低くなっているということが挙げられます。

 主な原因としては、御存知のとおり下水道の場合は、建築物から生じる生活排水を集水して処理するために管渠を敷設する必要があるものの、山間部は建築物が点在することから整備が困難で、更には費用の投資効率が著しく低くなるためです。

 これに対し、浄化槽は建築物ごとに個別に処理できることから、生活排水を1箇所に集める管渠の敷設は不要であるとともに、柔軟な施設整備が可能なことや比較的低コストかつ短期間での整備が可能であること等の特長があります。これらの特長は、地域経済や県民所得の向上が至上命題となっている本県においては大きなメリットとなることからも、水洗化することによって県民が大きな満足と利便性を実感できるよう、県や市町村等が連携しながら、更に整備を進めていく必要があると考えられます。

 また、整備を進めるためには、その大前提として、まさに浄化槽法の目的として掲げられているとおり、「公共用水域等の水質の保全等の観点から浄化槽によるし尿及び雑排水の適正な処理を図り、もって生活環境の保全及び公衆衛生の向上」を図ることが必要となります。この目的を現実のものとし、維持するために、貴会会営の岩手県浄化槽検査センター様や市町村及び県等が連携して、日々業務が行われているところです。特にも、岩手県浄化槽検査センター様におきましては、職員の皆様の御尽力により、平成18年度の11条検査の受検率は85.4%と、都道府県別で最も高い数値となりました。受検率が最も高いということは、浄化槽の設置者の環境に対する意識が最も高いと言い換えられるのかもしれません。県としましても、今後は更に生活排水処理に関する県民の意識を向上させるべく、岩手県浄化槽検査センター様の取組みの支援を行っていきたいと考えています。

 終わりになりますが、浄化槽を計画的に整備し、生活環境に悪影響を及ぼすことなく維持していくためには、貴会会員の皆様等の変わらぬ御尽力が必要となります。県としましても、各関係団体と連携を密にしながら、現在から将来に及ぶ県民の要望を実現させるために努めていきたいと考えていますので、今後とも引き続き御協力や御助言等をくださいますようお願いします。