「浄化槽行政について思うこと」

岩手県資源循環推進課
 技師 晴山 久美子


  はじめに

社団法人岩手県浄化槽協会及び会員の皆様には本県の浄化槽行政全般に関して、日頃から並々ならぬ御尽力、御協力をいただき、厚くお礼申し上げます。また、この度は会報「みず」に寄稿する機会をくださり、ありがとうございます。
浄化槽行政を担当して2年とまだ経験が浅いのですが、浄化槽に対して感じる所感を以下に記させていただきます。

1 広い岩手には欠かせない「浄化槽」

岩手県は、本州で一番広い県であり、豊かな自然環境を有する県です。緑豊かな奥羽山脈、北上山地から湧き出る水は、東北最大の長さを誇る北上川に流れ込み、その水は渡り鳥や魚の住処となり、お米をはじめとする農作物の命の源となります。また、急峻なリアス式海岸の三陸海岸では、主に川の河口に町が形成され、そこでとれる海の幸は、日本中の人々を惹きつけています。
>水は生物の命を育み豊かな自然環境を生み出しており、人はこの自然環境を享受して生きています。
この豊かな水環境を守りながら人が持続的に生活を営むためには、公共用水域に流れる汚水の負荷を低減させることが必要であり、そのために浄化槽を活用することは非常に有効な方法であると感じています。
また視点を変えて財政の面から考えても、県財政の逼迫するなかでは、集中的に汚水処理を行える公共下水道と、一戸一戸に対応可能な浄化槽とをうまく組合せ、バランスのとれた、かつ効率的な汚水処理が推進されることが望まれており、県や市町村等が連携しながら、浄化槽の整備を進めていく必要があると考えています。


2 浄化槽の維持管理

維持管理は、日ごろの保守点検・清掃に加えて、7条検査、11条検査の受検も重要な項目です。浄化槽が適正に維持管理されていることを把握するためにも、法定検査の受検率の向上が欠かせません。
平成15年度においては50.5%だった本県の11条検査の受検率は年々向上し、平成20年度の実績では、88.0%と全国の都道府県の中で一番となりました。そのため、全国の都道府県から「どうしたら法定検査の受検率を上げることができるか」といった問合せを受けることが多くあります。
回答としては、「岩手県民の環境に対する意識が高い」、「まじめな県民性」等の理由もあるかもしれませんが、やはり貴会会営・浄化槽検査センターをはじめとする皆様が地道に説明するといった努力があったためだと思います。最初のころは、浄化槽管理者になかなか理解していただけず、受検に対して数多くの反発を受けたこともあったと伺っています。法定検査の際に必要性を説明して回られたことで、徐々に法定検査の意味を広く県民に理解していただけてきたことが、現在の高い受検率へとつながっていったと考えています。今でも稀に、法定検査の受検の必要性についての問合せがありますが、私自身も法定検査の必要な理由をできるだけ丁寧に伝えるよう心がけています。今後も、法定検査の受検だけでなく維持管理や整備など、浄化槽への理解がより深まるよう努めていきたいと思います。
 最後に、浄化槽を計画的に整備し、維持管理していくために貴会会員の皆様等の変わらぬ御尽力が必要となります。各関係団体と連携を密にしながら浄化槽への理解を深めていけるよう努力していきたいと考えていますので、今後とも引き続き御協力や御助言等をくださいますようお願いします。