「浄化槽について色々と」

岩手県県土整備部下水環境課
主任 白藤 裕久


1 はじめに
 公益社団法人岩手県浄化槽協会の皆様には、日頃より浄化槽の普及啓発、適正な維持管理の推進にご尽力いただき、深く感謝を申し上げます。
 特に、東日本大震災津波直後に公衆衛生が迅速に確保されたことは、皆様のお力によるところが大きいと感じており、私も発災直後に釜石保健所に勤務しておりましたが非常に頼もしかったです。
 私が、5年前に初めて浄化槽行政に携わった際、浄化槽といえばFRP製合併浄化槽のイメージしかなかったので単独浄化槽のことが分からず、浄化槽法の歴史から調べたものでした。会報への掲載に際し誰かの参考になればということで、そのあたりから書き始めたいと思います。

2 これまでの浄化槽行政の流れ
 国における浄化槽行政の歴史は、昭和30年代後半~昭和50年代にかけての単独浄化槽の時代、昭和58年の浄化槽法制定(昭和60年施行)、その後の小型合併浄化槽の実用化、昭和62年の合併処理浄化槽整備に係る国庫補助制度創設による合併浄化槽への転換促進、平成12年の浄化槽法改正による単独浄化槽設置の原則禁止、平成6年度の市町村設置型浄化槽への補助制度創設となっており、現在の法令や事業制度につながります(参考:第1回「今後の汚水処理のあり方に関する検討会」環境省配布資料)。
 岩手県における浄化槽行政の取り組みは、会報「みず」に諸先輩方が寄稿されたバックナンバーを読むことでも大まかに分かります。浄化槽法制定前から法定検査があり受検率の向上が課題となっていたり、適切な維持管理の確保は今と変わらず課題となっていたりします。制度的にも国の補助事業制度創設にあわせて市町村ごとに徐々に補助事業がスタートし、普及促進の取り組みも進められ、年々少しずつ変化しながら現在に至ります。浄化槽の位置づけも、当初は下水道普及までの一時的な代替施設だったものが、浄化槽を完結した汚水処理施設として捉えるように徐々に変化しています。
 なお、浄化槽補助事業については、当初は環境生活部で所管していましたが、平成17年度に下水道事業、農業集落排水処理事業と併せて所管が一元化され、現在は県土整備部下水環境課で担当しています。

3 浄化槽の普及状況と今後
 さて、下水環境課で担当する浄化槽補助事業ですが、その普及目標は汚水処理全体の普及目標とともに、県の汚水処理構想である「いわて汚水処理ビジョン2010」の中に定められています。
 計画において目標年度である平成30年度末の浄化槽による水洗化人口割合は13.7%ですが、平成24年度末では13.3%となっています。一見すると達成も近く見えますが東日本大震災による影響も考えられ、今後の状況を見ていく必要があります。一方、汚水処理全体では、岩手県の汚水処理人口普及率は平成24年度末で75.4%のところ、全国平均は88.1%となっているため、浄化槽も含め汚水処理施設の整備をさらに進めていく必要があります。
 平成26年1月に国では、国土交通省(下水道)、農林水産省(集落排水)、環境省(浄化槽)が合同で「持続的な汚水処理システム構築に向けた都道府県構想策定マニュアル」を公表しています。今後、このマニュアルに基づいて県と市町村は、いわて汚水処理ビジョン2010に代わる新ビジョンの策定を、徐々に進めることになります。マニュアルでは、今後10年で汚水処理施設の整備を概成することを念頭に、集合処理(下水道や集落排水)か個別処理(浄化槽)かを経済性、住民意向等を踏まえて選択するとされています。具体的な手法等は国において検討中であり、地域の個別事情も様々ですので一概には言えませんが、集合処理での整備を計画していた地域において浄化槽が整備されるようになる可能性もあります。
 岩手県の現状及び国の方針を考慮しても、汚水処理施設における浄化槽の役割は今後さらに重要とになると考えております。

4 今年度の当課の取り組み
 最後に、浄化槽の整備促進のために今年度当課で取り組む内容をご紹介します。なお、いずれの取り組みにおいても岩手県浄化槽協会の皆様には多大なご協力をいただいております。

(1)浄化槽補助事業担当者会議
 事業実施に関する事項について、年度当初に補助事業の実務担当者を対象として開催しました。
(2)岩手県浄化槽担当者会議
 関係機関の連携、情報共有を図ることを目的として、浄化槽行政関係担当者を対象として開催予定です。
(3)浄化槽維持管理研修会
 浄化槽の適切な維持管理は、整備促進を後押しします。そのため浄化槽行政担当者を対象として維持管理について開催予定です。机上で理論を学んだ後、実稼動の浄化槽を確認します。
(4)浄化槽出前講座
 浄化槽の普及啓発のため、小学校の社会の時間などに当課職員が出向き、水循環や汚水処理、微生物観察などの内容で浄化槽に関する授業を実施しています。今年度は8校から申し込みがあり2校で実施済ですが、大変好評です。

5 おわりに
 浄化槽整備促進のためには、過去そうであったように様々な課題が発生し、ひとつずつ解決していく必要があります。そのためには貴協会及び会員の皆様との連携が重要と考えておりますので、より一層のご協力とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。