「浄化槽整備の推進と正確な浄化槽実態把握のために」

一関市役所上下水道部 下水道課管理係
主 事  阿部 国実


はじめに
 公益社団法人 岩手県浄化槽協会の皆様には日頃より浄化槽行政各般に多大なるご協力を頂いておりますことに深く感謝申し上げます。
 特にも、維持管理業務に携わる皆様には、浄化槽の適正な管理により、安定した放流水質を実現いただいておりますことは、浄化槽管理者から信頼を得るとともに、浄化槽制度そのものの信頼向上に大きく貢献いただいているところであり、重ねて感謝申し上げます。

 今回は、会報への寄稿の機会をいただき恐縮しています。浄化槽行政に携わって3年5月の未熟者ですが、折角いただいた機会ですので、この間に感じたこと、今考えていることなどをちょっと無責任に綴らせていただきます。

浄化槽整備の推進のために
 一関市は行政面積1,256㎢で県内では宮古市に次ぐ広さを有しております。汚水処理事業は、公共下水道処理など18の集合処理施設を展開しておりますが、集合処理全体の計画人口は全人口の半数程度であり、残りの半数は浄化槽が担う計画としております。汚水処理事業全体の普及率は平成26年度末で59.9%とまだまだ低く、汚水処理施設の整備を進めていく必要があります。
 浄化槽の整備状況ですが、市内では毎年300基前後が設置されており、県内でも高い値となっています。
 要因を考えてみますと、平成24年度より個人設置型の補助率を増額したことも大きな要因と考えますが、近年は、震災復興、消費増税前の駆け込み需要などの建築需要に引っ張られる形で設置基数が伸びたことも大きいと感じています。
 また、介護のためのバリアフリー化に併せた水洗化というのも設置需要として増えてきていると感じています。

 浄化槽は他の汚水処理事業同様、公共用水域の水質保全が目的とされているところですが、設置の判断は個人ごとになりますので、動機としては、トイレの水洗化による快適な住環境の実現が大きな要因となります。
 そうした要求を浄化槽設置に確実に結び付けていくことが、今後の水洗化率向上の鍵となってくるものと考えます。
 設置の支援として、設置時の負担を低減させるための制度が、市町村設置型事業や個人設置型の補助金となりますが、これから更なる普及拡大を図るには、よりきめ細やかな支援も必要と感じているところです。
 支援施策には、他市町村の先行事例として、排水設備工事への補助や維持管理費用への補助が挙げられますが、適正な汚水処理の確保には修繕への補助なども有効な対策となるのではないかと考えています。

 平成26年1月に汚水処理関係3省連名で「持続的な汚水処理システム構築に向けた都道府県構想策定マニュアル」が作成され、そのなかで「10 年程度を目途に汚水処理の「概成」(地域のニーズ及び周辺環境への影響を踏まえ、 各種汚水処理施設の整備が概ね完了すること)を目指した」と時間軸の観点が盛り込まれたことから、市町村では早期概成に向けたアクションプランを策定し、その確実な実行に取り組んでいく必要があります。各種汚水処理施設には、当然、浄化槽も含まれるわけで、前述した施策の導入を検討していくことと併せて、浄化槽設置の意識をもっていただくための取組みも必要です。

 意識啓発の取り組みには、浄化槽検査センター、岩手県下水環境課で実施している出前教室を活用した教育段階での啓発に加えて、市民センター事業などの地域活動組織単位での出前講座なども考えられます。地域の中で話をする場を持つことで、浄化槽に対する市民の声を聴く機会ともなりますので、今後取組んでいきたいことの一つです。

 一関市では浄化槽の整備促進の取り組みのほか、平成18年度より県からの権限移譲を受けて浄化槽法に基づく事務を行っています。
 年間150基を超える設置届出の受付、使用開始報告、廃止届に基づき浄化槽の適正な実態把握と、法定検査結果に基づく報告徴収や二次検査等を通じた適正管理の確保に取り組んでいます。

正確な浄化槽実態把握のために
 特にも、浄化槽使用実態の的確な把握が浄化槽全体の信頼性向上につながると確信し、現在、独自にGIS(地理情報システム)を活用した台帳管理を進めています。
 課題としては、浄化槽設置者が使用開始報告や管理者変更報告を行う必要があるとの認知度の低さが挙げられます。
 市では設置届出書の受理通知に併せて浄化槽維持管理等通知書を送付し、お知らせしているところですが、更なる工夫も必要と考えております。
 そこで、使用開始に際して維持管理業務を締結する際に、維持管理業者の皆様に使用開始報告書の提出状況を確認いただくことで、未提出の件数を大きく減らすことができると考えております。
 紙面を借りて恐縮ですが、使用開始報告、管理者変更報告、廃止届が確実になされるようご協力くださいますようお願いいたします。

おわりに
 思うままに書いてみましたが、私が浄化槽を担当している間に一つでも多くの課題解決に取組んでいけたらと気持ちを新たにしたところです。
 岩手県浄化槽協会様をはじめ会員の皆様には、よりよい浄化槽行政の実現のため、より一層のご協力とご支援を賜りますようお願い申し上げます。