「浄化槽業務に携わって」

岩手県二戸保健所 環境衛生課長
遠藤 秀則


 暑中お見舞い申し上げます。
 公益社団法人岩手県浄化槽協会の皆様には、日頃から、浄化槽の普及啓発、適正な維持管理の推進に御尽力いただくとともに、保健所の浄化槽業務に御支援・御協力をいただき深く感謝申し上げます。
 この度は、会報「みず」への寄稿の機会をいただきありがとうございます。

 私は、平成2年4月に新採用で盛岡保健所(現:県央保健所)に入って以来、県内4ヶ所の保健所で勤務してまいりました。これまでの環境行政の中で、浄化槽業務に携わって感じたことなどを記したいと思います。

 私が盛岡保健所で、まず担当した業務は環境営業六法です。旅館やホテルの施設の図面審査をする中で、水洗トイレには下水道以外に浄化槽という処理施設があることを初めて知りました。平成5年には、雫石町でアルペンスキーの世界大会があり、大会前に宿泊施設の一斉監視を行い、食品衛生監視員と二人一組で旅館・ホテルを巡回し上水道の消毒状況や、浄化槽の保守点検・清掃記録を確認するといった業務を行いました。

 続く大船渡保健所の時代ですが、県が実施した「生活排水に係る河川実態調査」において、須崎川が県内で最も汚濁している河川(BOD:1リットル当たり44ミリグラム)であることが判明したのを受け、須崎川流域の7地域の住民が、河川に清流を取り戻し汚名返上しようと立ち上がり、須崎川清流化対策推進協議会を設立しました。私は、市役所の担当者と一緒に生活排水対策学習会の講師として、「台所で食べ残しの食品を流してしまったら、どれだけ水が汚れてしまうのか。」とか「水切りネット」の使用、合併処理浄化槽設置の呼びかけなど、連日夕方公民館に出かけて、住民の方々にお話したことを思い出します。

 この頃は、まだ、単独浄化槽の設置が認められており、水環境に負荷を与える単独浄化槽の新設に対して忸怩たる思いで、土木部建築主事からの意見照会に「合併処理浄化槽とすることが望ましい。」と回答していたことを覚えています。

 当時、一般住宅への合併処理浄化槽設置補助事業は、大船渡市が県内市町村の先頭を切って進めており、合併処理浄化槽の設置基数も一番多かったと思います。その後、須崎川は、平成19年度の市の調査でBOD75%値1リットル当たり1.1ミリグラムと大幅に改善されたと聞いてあの頃の活動が報われたような思いがあります。

 平成9年度からは、再び盛岡保健所に勤務することとなりました。このときは、岩手保健所が統合され管轄市町村が11市町村となりました。管内の浄化槽設置基数は1万基を超え、年間の新設基数も600基を超えておりました。当時、まだ一人一台パソコンは整備されておらず、浄化槽新設に伴う書類審査は、環境課の若手職員4名で市町村ごとに分担して、毎日のように図面をチェックし、維持管理通知書を発行するという事務を流れ作業のようにこなしていました。盛岡地区合同庁舎にエアコンが設置される工事中で事務室内には、工事の仕切り壁が作られて風通しの悪い狭い所内で机を並べて頑張っていました。

 その後、平成12年度から二戸保健所の勤務となりました。現在の新しい合同庁舎ではなく、あまり調子の良くない浄化槽が設置された古い庁舎です。当時は、青森県境産業廃棄物不法投棄事案が発覚し関係者が逮捕されていましたが、投棄された廃棄物の量や種類は不明であり対応はまだ始まったばかりでした。二戸保健所の時代に、単独浄化槽が構造基準の告示から削除され、単独浄化槽の新規設置が原則禁止となり、併せて住宅の処理対象人員の算定式が現在の延べ床面積130平方メートル未満と以上の2区分となり、二世帯住宅を原則10人槽とする考え方も新たに整理されました。法定検査で「不適正」となった浄化槽の確認と指導で検査センターの職員の方々と一緒に現場を見る機会もあり、施工不良や維持管理上の問題点について現地で教えていただいたこともあります。

 その後、平成15年度から資源循環推進課へ、平成18年度からは環境保健研究センター、平成21年度から再び大船渡保健所へ転勤となりましたが、浄化槽の実務からは離れ、廃棄物業務を中心に担当するようになりました。特に平成23年3月に東日本大震災が発生してからは、災害廃棄物をいかに処理するかの対応に追われることとなり、廃棄物特別対策室勤務を経て、平成27年度から宮古保健所に勤務しましたが、ここでも台風10号により管内の宮古市と岩泉町が大きな被害を受け、発生した災害廃棄物への対応に直面することとなりました。

 宮古保健所時代には、東日本大震災からの復興工事が進み街の住宅地や商業地の位置が変わっていく中で、建物の用途や使用形態を変更することで浄化槽への流入負荷が増大し、著しい水質低下となる事例がありました。私が、直接担当したわけではありませんが、コンビニエンスストアが飲食店(ラーメン店)となったケースでは、BOD の目標水質1リットル当たり20ミリグラムを20倍以上も超過し、当然のことながら法定検査では「不適正」と判定され、二次検査では、浄化槽検査センターの職員と一緒に営業者の立会いのもとに施設検査を行って、グリーストラップの容量を大きくし清掃回数を増やすよう指導するなど対応に苦労しておりました。このラーメン店は、その後営業をやめたとのことです。

 現在、保健所の環境衛生課は、従来からの食品、薬務、犬・猫の動物愛護、水道業務の他に、振興局業務として、廃棄物、公害、鳥獣保護に加え、環境保全に関する普及啓発や地域の環境を守り育てる人材の育成、近年大量に出没するツキノワグマの捕獲許可や鳥インフルエンザに関するサーベイランスとしての野鳥監視への対応など年々業務範囲が拡大したり新たな課題が発生するなどして、どこの保健所でも浄化槽業務に力を注ぐことが難しくなってきています。そのような中で、浄化槽協会の皆様には、技術研修会を開催していただくなど、若手の保健所環境担当職員には最新の知識や技術を習得する有益な場となっております。

 私が浄化槽業務に携わってから27年余りが経過し、この間の浄化槽の性能は、著しく向上し目覚しいものがありますが、浄化槽本体が十分にその機能を発揮し続けるためには、適正な設計と施工により設置され、保守点検や維持管理をしっかり行う必要があることは昔から変わっておりません。

 地域の快適な暮らしと環境を確保していくために、これからも浄化槽協会の皆様方と一緒に連携して対応していきたいと思いますので、引き続き御支援と御協力をお願いいたします。