「いわて汚水処理ビジョン2017」について

岩手県県土整備部下水環境課
技師 八重樫 大祐


1 はじめに
 公益社団法人岩手県浄化槽協会の皆様には、日頃より浄化槽の普及啓発、適正な維持管理の推進にご尽力いただき、深く感謝申し上げます。
 岩手県では、汚水処理施設の整備等に関する新たな県構想「いわて汚水処理ビジョン2017」を策定しました。これは、従来の県構想「いわて汚水処理ビジョン2010」の次期計画にあたるもので、計画期間は2018年から2025年までの8年間を設定しています。
 今回は、この新たな県構想「いわて汚水処理ビジョン2017」について寄稿させていただきます。


2 「いわて汚水処理ビジョン2017」策定の背景
 本県の2016年度末における汚水処理施設の整備状況は、汚水処理人口普及率が79.8%、処理場数が175箇所となっています。このことは、まだ県民の約2割の方が汚水処理施設を利用できていないこと、これまで整備した膨大な施設を運営管理していかなければならないことを示しています。
 一方、国においては、施設整備の早期完了を目指した中期的な施設整備計画並びに長期的な整備・運営管理計画を策定することを都道府県に要請しています。
 また、県では、人口減少の歯止めを展望した「岩手県人口ビジョン」及び「ふるさと振興総合戦略」、長期的な視点に立った公共施設等マネジメントの取り組みを推進するための「岩手県公共施設総合管理計画」を策定しています。
 これらの社会情勢の変化や厳しくなる処理施設の経営など課題に対応する新たな県構想の策定が必要となりました。
 策定にあたっては、まず市町村が今後の汚水処理施設の整備計画を策定しました。この計画をもとに県構想の素案を作成し、学識経験者や専門家の方々から成る「いわて汚水処理ビジョン検討委員会」で検討を行いました。
 また、県民の皆様からの意見を伺う「パブリックコメント」を実施しました。これら一連の手続きを経て、県関係部課と市町村により構成されている「岩手県汚水適正処理推進会議」で協議・承認され、このたび策定に至ったものです。


3 「いわて汚水処理ビジョン2017」のポイント
「いわて汚水処理ビジョン2017」では、

〇水環境の保全、未来に引き継がれる豊かな自然
〇快適で豊かに暮らせる生活環境の早期実現
〇資源・再生可能エネルギーの有効利用
〇持続可能な汚水処理の運営
〇浸水不安のない街
〇汚水処理に関する普及啓発
以上の6つの基本理念を掲げています。この基本理念のもと、
① 汚水処理施設の整備
② 資源エネルギーの利活用
③ 汚水処理施設の運営
④ 雨水対策
⑤ 広報活動・普及啓発
以上の5つの項目について目標を掲げ取り組むこととしています。
 ここでは、「汚水処理施設の整備」と「広報活動・普及啓発」について取り上げたいと思います。

〇汚水処理施設の整備
 岩手県の汚水処理人口普及率は、2016年度時点で全国に比べ約10ポイント低く、東北地方内でも4番目となっており、「汚水処理施設の整備」の項目では、基本理念の「快適で豊かに暮らせる生活環境の早期実現」を目指すため、2025年度における普及率の目標を91%と設定しています。
 

 この目標は、今後の整備の実現性や全国との普及率の比較等を踏まえ検討し設定したものです。
 処理方法別に見てみると、2025年度までに、公共下水道や農業集落排水事業のように、各戸の汚水を集めて処理する方式(集合処理)の普及率は97%となる見込みですが、浄化槽のように各戸で処理する方法(個別処理)の普及率は73%になる見込みで、その差は大きく開いています。
 一方で、全体に対して集合処理方式による整備する人口の割合が減少し、個別処理方式、いわゆる浄化槽で整備する人口の割合が増える見込みとなっています。これは、未整備地区の整備手法として個別処理である浄化槽の割合が高くなったことを示しています。
  

 今後は人口密集地域から人口密度の低い地域での普及促進が主となる中、浄化槽の普及促進が普及率の向上のカギを握っていることとなります。
 また、今後はさらに人口減少が進んでいくものと予想され、集合処理方式が良いか、浄化槽のような個別処理が良いか、将来の地域の状況を考慮した整備方法を検討し、効率的に整備していく必要があります。

〇広報活動・普及啓発
 汚水処理施設の普及には、汚水処理施設の役割やその必要性を広く県民の皆様に理解してもらうことが重要と考えています。県ではこれまで、貴協会などと連携して、汚水処理の仕組みや施設の紹介などの活動を行ってきました。その活動の1つである出前講座は、小学校などに直接出向いて実演を交えながら汚水処理の仕組みや役割等を紹介しているもので、2008年度の開始からこれまでに延べ140回開催し、3,650人が受講しており、次世代の下水道・浄化槽を担う子供たちへの環境教育の一環として、これらの活動は今後とも継続・発展させていくことが重要と思われます。また、浄化槽の整備については、個人(住民)の意向によるところが大きいという面もあるので、早期整備の推進に向けて、浄化槽による整備割合が高い市町村を重点的に普及啓発活動に努めます。

4 最後に
 「いわて汚水処理ビジョン2017」についての詳細については、岩手県のホームページで公開しています。
「いわて汚水処理ビジョン2017」で掲げる目標の達成、特にも浄化槽整備促進のためには今後とも貴協会及び会員の皆様との連携が重要と考えておりますので、より一層の御協力と御支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。