「浄化槽の担当者になって」

岩手県県土整備部 下水環境課
技師 菊池 亮太



1 はじめに
 公益社団法人岩手県浄化槽協会の皆様には、日頃から浄化槽の普及啓発、適正な維持管理の推進に御尽力いただき深く感謝申し上げるとともに、協会発足から50周年を迎えられますことを心からお祝い申し上げます。
 この度は、会報「みず」への寄稿の機会をいただきましたので、僭越ながら浄化槽担当者になって感じたことを記したいと思います。

2 保健所での業務
 私は、以前、宮古保健所で勤務しており、そのうち1年間浄化槽業務を担当しました。保健所の主な業務は、浄化槽設置を伴う建築確認申請に意見をすることや浄化槽設置届の受理です。担当者になって間もない頃は、浄化槽の仕組をほとんど理解せずに過ごしていましたが、担当して3か月を過ぎた頃、浄化槽協会の検査員に同行して、初めて一般家庭の浄化槽の水質検査に立会う機会がありました。マンホールを開けて内部を見た時に「よくこんな小さな箱で生活排水を綺麗にできるなあ」と思ったことを覚えています。この時に、検査員から、浄化槽の構造によって維持管理の方法に違いがあること、流入水の移送時に流量調整機能を活用することが良好な水質を保つうえで重要であることなど浄化槽の基礎を教えていただいたことが印象に残っています。
 協会の50年の歴史で、浄化槽は単独浄化槽から合併浄化槽に移行し、合併浄化槽も構造例示型からモアコンパクト型と様々な構造のものが出てきました。時代とともに検査員の知識や技術が引継がれ、保健所職員も検査員から多くのことを学んできたと思います。私もその恩恵にあずかり、少しだけ浄化槽担当者らしくなることができました。

3 今回の改正について
 今年度から下水環境課で再び浄化槽業務を担当することとなりました。岩手県では、汚水処理施設の整備等に関する県構想「いわて汚水処理ビジョン2017」に掲げる2025年度末の汚水処理人口普及率91%という目標に向けて汚水処理施設の整備・普及に向けた取組をしています。平成29年度末時点では、普及率80.8%なので、まだまだ頑張らなければいけません。
 当課の浄化槽の整備に係る業務としては、市町村の循環型社会形成推進地域計画に基づき整備される浄化槽への補助金の交付を行っています。保健所では、設置者、施工業者、保守点検業者と関わりがありましたが、当課では市町村を通じて間接的に設置の援助を行っているので、市町村の担当者の方と関わる機会が多いと感じています。このため設置者と直接やりとりすることはありませんが、交付事務に誤りが生じると、市町村や設置者等に迷惑がかかるので緊張感を持って仕事に取組んでいます。
 また、浄化槽の普及に係る業務として、小学生を対象とした出前講座を協会と連携しながら開催しております。出前講座では、パワーポイントによる講義や浄化槽にいる微生物の観察を通じ、浄化槽の仕組や地域の水環境との関わりを知る機会を設けています。これを御一読していただいている方の周りに小学校の先生がいましたら、ぜひ申込を勧めていただきたいと思います。出前講座は大人でも興味を持てる内容ですので、今後は親子で参加できるような取組を展開できれば良いと個人的には考えています。

4 おわりに
 岩手県では、人口密度の低い地域での汚水処理施設の整備手法は浄化槽に移行してきております。ただし、浄化槽は下水道と異なり、個人の所有物になることがほとんどで、自治体側が汚水処理施設の整備を進めるために、浄化槽を設置したいと思っても、設置の可否は個人に委ねられています。浄化槽が無い生活に不便を感じていない方からすると、設置費用等から導入に至らない方が多いため、引き続き浄化槽の普及啓発を行っていくことが大切だと感じています。
 浄化槽の整備・普及のためには、今後とも貴協会及び会員の皆様との連携が重要と考えております。50周年に際して、貴協会のますますの御発展を祈念するとともに、より一層の御協力と御支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。