「浄化槽担当者としての所感」

岩手県県央保健所環境衛生課
技師  五日市 千秋



 1 はじめに
 公益財団法人岩手県浄化槽協会及び会員の皆様には、日頃から浄化槽の普及啓発及び適正な維持管理に御尽力を賜り、深く感謝申し上げます。また、コロナ禍においても、感染対策を講じながら日々の業務に携わり、県民生活の安定確保に御尽力いただいていることに重ねて感謝申し上げます。
 この度は会報「みず」への寄稿の機会を頂きましてありがとうございます。僭越ながら、日々の業務の中で感じていること等をお話しさせていただければと思います。
 
 2 浄化槽との出会い
 多くの保健所担当者と同じように、私も保健所の浄化槽担当になって初めて浄化槽について知りました。初めは、浄化槽の構造や内部のろ材・接触材等を見てもピンとこなかったのですが、し尿や雑排水が、放流槽にたどり着く頃には透明度を増しているのを見て、目に見えない微生物の働きに感銘を受けたことを覚えています。また、当時は東日本大震災津波が起こった翌年だったのですが、沿岸の市町村担当者から発災当時の汚水処理施設の被災状況をお伺いしたことがありました。その自治体では、管理している下水道終末処理施設と浄化槽(農業集落排水処理施設)のどちらも被災してしまったのですが、浄化槽の方が速やかに復旧したそうです。構造が比較的コンパクトであり、侵入した土砂や海水の除去が容易だったことや、ブロワの修繕により好気処理を早期に再開できたこと等様々な要因があったと伺いましたが、浄化槽は災害に強い、という印象が残っています。
 
 3 保健所業務について
 保健所では、浄化槽設置計画の審査や維持管理に係る指導等の業務を行っています。設置計画の審査においては、人槽が適切か、施工上の基準は守られているか、放流先は環境衛生上支障がないか等を重点的に確認します。そのなかで、JISによる算定が建築物の使用状況により明らかに実情に沿わないと考えられる場合や、水路や道路側溝等の放流先が確保できない場合等のイレギュラーなケースは、お話を伺いながら要領等と照らし合わせ、どのようにしたらよいかを見つけていきます。建築物の増改築や用途変更に関する相談も多く寄せられており、建築基準法を所管する特定行政庁と連携して対応していますが、流入負荷が増えることで放流水の水質が悪化しないよう、慎重に対応しているところです。
令和2年4月1日に改正浄化槽法が施行となったほか、行政手続における押印の見直しが行われており、浄化槽法関係の手続きには変更点が多く発生しています。貴協会及び会員の皆様には既に対応いただいていることと思いますが、判断に迷われた際は所管の保健所まで問合せいただければと思います。
 
 4 おわりに
 本県の保健所は、振興局業務として環境学習や環境保全団体の支援等も行っています。これらの業務に携わる中で、良好な水環境やその中で生息している希少な動植物、またそこから享受できる豊かな経験等はとても貴重で、次世代に継承していきたい本県の財産だと感じています。
広い県土を有する本県において、良好な水環境の保全のためには浄化槽の普及が不可欠です。皆様の御力を頂きながら日々業務にあたっているところではありますが、これからも県民生活の安定確保及び水環境の保全のため、貴協会及び会員の皆様の御指導、御協力を賜りますようお願い申し上げます。