岩手県環境生活部資源循環推進課
主事 舘岡 瑛
1 はじめに
公益社団法人岩手県浄化槽協会及び会員の皆様には、日頃から浄化槽の普及啓発、適正な維持管理にご尽力を賜り、深く感謝申し上げます。また、会報「みず」への寄稿の機会をいただきましたので、浄化槽担当者になって感じたことなどについて記させていただきます。
2 浄化槽担当になって
私が岩手県庁の浄化槽行政担当者として配属された時、正直に言って浄化槽についての知識はありませんでした。私の中で浄化槽という言葉は、どこか遠くて無関係のものに思えていました。しかし、浄化槽は、家庭や事業所から排出される汚水を処理し、清潔な水として自然に戻す、環境保全上重要な施設であることを学び、業務経験を重ねる中で、地域社会にとって不可欠な存在であることを強く実感しました。
また、本県の浄化槽58,717基のうち合併浄化槽の普及率は93.9%(全国1位)、11条検査の実施率は92.2%(全国3位)であることを知り、これは本県の浄化槽行政を担う担当や関係機関の皆様が努力を続けてきた成果であり、私がその一端を担うことに強い責任を感じます。(参考データ:環境省「令和4年度における浄化槽の設置状況等について」)
3 特定既存単独処理浄化槽について
特定既存単独処理浄化槽とは、既存の単独処理浄化槽のうち、そのまま放置すれば生活環境の保全や公衆衛生上重大な支障が生ずるおそれのある状態にあるものを指します。単独処理浄化槽は、多くの場合、設置されてから長い年月が経過しているため、浄化槽本体の破損又は変形による漏水や、不適切な管理によりし尿が適切に処理されないなど、生活環境等への悪影響が懸念されるものが存在している可能性があります。
こうした問題を解決するため、環境省では、2020年(令和2年)4月に浄化槽法の一部改正を行い、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換の推進や、浄化槽の維持管理向上を目的とし、「都道府県知事は、特定既存単独処理浄化槽に係る浄化槽管理者に対し、当該特定既存単独処理浄化槽に関し、除去その他生活環境の保全及び公衆衛生上必要な措置を取るよう助言又は指導等をすることができる」こととされました。しかし、本制度が十分に活用されていない状況を受け、令和6年2月に総務省から環境省に対し、判定の考え方の見直しや、定量的基準の設定等を行うよう勧告がありました。
これを受け、環境省では「浄化槽法施行状況点検検討会」において、課題と対応方針を検討し、令和6年11月に報告書を取りまとめたところです。環境省では、検討結果を踏まえ、令和6年度内に「特定既存単独処理浄化槽に対する措置に関する指針」を改正することとしており、県としては、改正指針を踏まえ、本県における特定既存単独処理浄浄化槽の判定及び指導フローを策定する予定です。
特定既存単独処理浄化槽の適切な把握と改善は、地域の水質保全と公衆衛生の向上に欠かせないため、関係者の皆様方の御尽力を賜りますようお願い申し上げます。
4 おわりに
広い県土を有する本県において、浄化槽は、良好な水環境を保全するために必要な生活排水処理施設であることはもちろん、今後の社会情勢を考慮すると、浄化槽による分散型の汚水処理はこれからも増えていくものと思われます。今後とも浄化槽による汚水の適正処理を推進するため、貴協会による御支援と御協力を賜りますようお願い申し上げます。