汚泥沈澱率(SV)あれこれ

岩手県大船渡保健所
吉田 博


 はじめに
 最近の新構造浄化槽は、生物膜方式が大はやりでどちらかというと、活性汚泥方式は、影が薄くなったかに感じられますが、施設全体からみればまだまだ圧倒的に多くの活性汚泥方式があります。
 この活性汚泥による浄化槽の維持管理上、重要でもあり、またやっかいでもあるのが汚泥管理といえます。
 今回、この誌上をお借りして汚泥管理上重要な指標である汚泥沈澱率(以下SVと略)について述べることとします。

1.何のためSV試験をするのか
 今さらなんのためというのも変な話ですが、整理すると次のようになるものと考えられます。
 はじめに、ばっ気槽混合液中の汚泥の分離、沈降の状態をみます。
 次に、ばっ気槽混合液の汚泥量のめやすとします。例えば、SVが高い。汚泥が増えた。引抜きが必要とか。逆に少ないと不足しているとかというふうに。
 さらに、返送汚泥量を決定します。これは、ご承知のとおり、次の式から求めます。
  返送汚泥量/流入水量=汚泥返送比
                 =SV/(100-SV)  式①
 この式は、ばっ気槽の汚泥の物質収支から導かれたものですが、式の簡略化のため、返送汚泥、流入水の固形物濃度及び浄化槽内の水の流れ等の時間的変化を除外したものですから、あくまでもめやすで、例えばSVが高い場合汚泥返送量を多めにするといった程度が適当と考えられます。

2.他にSV試験で何がわかるか
 まず、汚泥の外観、色とかフロックのでき具合等により、一応の汚泥の良否がわかります。
 次に、実際の沈殿槽において、どれだけの時間でどれぐらいの汚泥界面高となるのかというような汚泥の沈降の状態を推定できます。仮に、SV試験用の高さ35㎝、1000mlのメスシリンダーに混合液を入れ、15分後に汚泥界面の高さが20㎝になったとします。ここで、このシリンダーの高さの10倍の深さ3.5mの沈殿槽を想定しますと、汚泥界面の高さが2mになるには、15分の10倍の150分を要することとなります。さらに、これを一歩すすめ、図のように各時間ごとのシリンダー内の汚泥界面の高さをとり、沈降の曲線を求めると、任意の深さの沈殿槽の沈降曲線が、式②により求めることができます。ここで求めた沈降曲線は任意の時間の汚泥の濃縮ぐあい、つまり濃縮汚泥の濃度の推定にも応用できます。

3.SV試験のときどんなことに留意するか
 測定用シリンダーの大きさについてですが、実際管理に従事する人たちの間でも、さまざまな大きさのシリンダーを使っているのをみかけます。前に述べたように、このシリンダーの高さにより30分SV値は大きく違ってくるので、一定の大きさ、この場合下水試験法や浄化槽法定検査用に定められている無色透明、内径6.5㎝、1000mlのシリンダーが適当と考えられます。
 さて次に、ばっ気槽のどの位置から混合液を採るかですが、当然汚水流入、返送汚泥が入ってくる付近は、さける必要があること。またSV試験が、最終沈殿槽の管理上重要な指標であることなどから沈殿槽へ移流する近くが、適当と考えられます。
 さらに、どのような浄化槽内の流れのとき測定をするのかというと、理想的にはばっ気槽への流入汚水が、時間的変動がなく入ってきて浄化槽全体の流れが定常状態となっているときでしょう。ところが実際は、流入汚水自体や流入ポンプのオンオフにより、ばっ気槽へ入ってくる汚水は、時間的に変化するわけです。一般的に汚水流入があるとSV値は下がりますし、また返送汚泥の濃度も変化しこれがまたSVに影響をあたえます。このように槽内の水の流れによりSV値も変化するので、SV測定にあたっては、測定時の浄化槽全体の水の流れがどうなっているのか考慮して測定する必要があります。

4.SV値は水温とどのような関係があるのか
 よく冬場に水温が低下すると、汚泥がフワフワしてうまく沈降しないという例がみられます。
 さて、この水温が汚泥の沈降速度にどのように影響するのかといいますと、まず汚泥の生物相、フロックの凝集のぐあい等は変化のないものとして、単に物理的沈降を考えると、汚泥粒子(フロック)の沈降速度は、粒子の密度と液の密度の差に比例し、液の粘度に反比例するといわれております。
 水の密度と温度の関係は、4℃で密度が最大となり、これより温度が上がれば小さくなるので、粒子と水の密度の差は水温が上がると大きくなるかにみえます。ただ、この場合、フロック自体にも保有水がたくさんあるので、温度変化は密度の差にあまり影響しないのではと考えております。このことに関して、詳しい方がおりましたらご教示願います。
 次に、水の粘度ですが、温度が上がると小さくなり、逆に温度が下がると大きくなります。仮に水を純水とすると、温度が20℃のときと4℃のときでは、4℃の方が1.56倍大きくなります。このことから逆に、沈降速度は20℃のときのほうが4℃のときに較べて1.56倍大きくなります。このように汚泥の沈降速度は、低水温のとき小さく、水温が上がると大きくなるものと考えられます。
 以上のことから、SVについていえば、水温の低いときは汚泥総量の割にSV値は高いということ。つまり、汚泥容量指標が高く、いわゆるフワフワした汚泥となりやすいと考えられます。いずれにしても、低水温というのは、ばっ気槽に限らず沈殿槽においても望ましくないようです。

最後に
 SVについていろいろ述べましたが、私自身浄化槽についてまだまだ未熟で、ここで述べた中には誤りや認識不足な点もあるかと思います。そのことにつきましては、ご教示いただければ幸いと思います。
 今後も、浄化槽に関する仕事を通して、協会の多くの方々とお会いすることと思います。その節はよろしくお願いします。