岩手県環境保健部環境衛生課
大泉 善資
浄化槽の法定検査制度も今年で5年目を迎えましたが、過去3年間、連続して不適正であると判定された浄化槽が、県内全体で44基ありました。これらの設置者別の内訳では、公共団体等によるものが23基(52.3%)、また用途別の内訳では、共同住宅、寄宿舎等に設置されたものが16基(36.7%)と、それぞれ最も多くを占めておりました。
これらの浄化槽は、定期的に法定検査を受け、また所定の頻度で点検が行われているものが多いのですが、にもかかわらず、このように長期にわたって、その本来の機能が発揮できなかったことの原因としては、浄化槽そのものに施工ミス、装置の故障、老朽化があったり、設計条件と著しく異なる使用がなされていたこと等があげられます。これらの欠陥は、通常の管理技術のみではカバーしきれないことが多く、このような浄化槽がひとたび設置されますと、長期間にわたって水質汚濁の原因となりかねません。
このような事態を防止するために、県では浄化槽を設置しようとする者(届出事務を代行することの多い設計施工業者、浄化槽販売業者等にも)に対し、保健所の環境衛生指導員と事前協議を行うよう指導しております。この事前協議の場では、建築物の用途、規模、排水特性等に応じ、処理能力、方式の検討が行われますが、特に使用が一時的(あるいは周期的)に増大(あるいは長期間停止)する場合等は、綿密な検討がなされます。また、設置場所に応じた保護措置がなされるか、適切な勾配が確保可能か、維持管理が容易に行えるような設置構造であるか等についても検討がなされます。
このような事前協議に対しては、その内容が設置届出(あるいは建築確認申請)時の審査の内容と重複している面があるためか、「設置しようとする者にとって、時間的に負担になる。」との声を聞くこともあります。しかしながら、当初計画に問題があった場合、設計後の修正は時間的にも、また経済的にも大きな負担となることが多く、これを防ぐためにも、事前協議の場を十分に活用していただきたいと思います。
こうして、「過大設計」や「点検不能」等となる可能性が一つずつ消去されますが、残念ながら書類どおりの施工がなされない場合もあり、このためこれを早期に発見し改善していただくために、工事完了後には環境衛生指導員(あるいは建築主事)による竣工検査も行われております。
このように、現在、浄化槽の設置計画時から完成までの間には二重三重のチェックが行われており、また昭和60年10月からは浄化槽法の施行により、浄化槽設置工事にあたっては、浄化槽設備士による監督と施工基準の遵守が義務付けられることになっておりますので、今後管理者泣かせの浄化槽が新たに設置される例はかなり減少するであろうと思われます。
これに対し、昭和30年代に設置された浄化槽は約1100基、昭和40年代に設置された浄化槽は約5000基あり、今後はこれらの中から、建築物以上に浄化槽の老朽化が進み、処理に支障を生じる例が多くなるかと思われます。
このような浄化槽については、日頃の保守点検において老朽、故障等の早期発見、修復に努めていただくとともに、場合によっては施設更新の必要性等についても設置者と検討していただき、今後「○年連続不適正」といった浄化槽が、適正処理が不能のまま使用されることのないよう、協会員の皆様にもご協力をいただきたいと思います。