小型合併浄化槽の奨励を!

岩手県環境保健部生活衛生薬務課
簗田 幸


 浄化槽に関する包括的な諸制度が法及びこれに基づく条例等により、整備されると共に最近の浄化槽の処理技術の向上にはめざましいものがあり、特に家庭用小型合併浄化槽の登場はこれまでの浄化槽行政を根本的に変革し、生活排水対策の特効薬としての期待がかけられている。
 厚生省は本年度から、合併浄化槽の普及を図るため、設置者に対する助成制度を導入することとなった。
 補助の対象となるのは、市町村が「合併処理浄化槽設置整備事業実施要綱」に基づき、合併処理浄化槽の設置者に助成する事業となっている。
 同実施要綱によると、事業の対象となる地域は、下水道法第4条第1項の認可又は同法第25条の3第1項の認可を受けた事業計画に定められた予定処理区域以外の地域で、かつ、①湖沼法の指定地域②水道水源の流域③水質汚濁の著しい閉鎖性水域並びに④都市中小河川の流域、などに該当する地域となっている。
 また、事業の対象となる合併浄化槽の基準は、BOD除去率90%以上、放流水のBODが20mg/l以下の機能を有するものとされている。この事業の目的はあくまで生活排水による公共用水域の汚濁等の生活環境の悪化に対処するためのもので、合併浄化槽を計画的に整備することとされている。
 構造基準面については、50人以下の小型合併浄化槽の構造基準原案が7月6日(財)日本建築センターでまとめられており、8月中にも建設省に答申され、最終的な検討が加えられた後、年内に告示される予定となっている。
 同原案の処理方式は、1次処理が沈澱分離槽と嫌気性ろ床槽の2タイプで、2次処理に接触ばっ気槽を組み合わせたものとなっている。処理対象人員が5~10人槽については、用途が住宅用ということから、これまでの評定内規がほぼ基準に採用されている。
 11~50人槽については、51人槽以上の容量も考慮し、一人当りの加算容量は10人以下の2分の1となっている。
 また、普及啓発面では、本年度より、浄化槽法の全面施行日にちなんで、毎年10月1日を「浄化槽の日」に設定し、これまで、9月24日の「清掃の日」を中心として、9月21日から1週間展開していた「環境衛生週間」の期間を9月24日から10月1日までの8日間とし、10月1日には東京で(社)全国浄化槽団体連合会等関係16団体による「全国浄化槽大会」が開催されるなど、国の浄化槽行政強化策は着々と軌道に乗ってきている。
 本県における浄化槽の現況は、昭和61年度末において、11,858基設置されており、浄化槽人口は119,220人となっている。
 過去10年間の増加率(対前年度比)及び合併浄化槽の占める割合は下表のとおりであり、合併浄化槽は年々着実に伸びてきているが浄化槽全体の伸び率は横ばい低迷している。20人槽以下の小型合併浄化槽の設置状況は、60年度1基、61年度4基と、やっと芽を出した状態である。


過去10年間の浄化槽の増加率及び合併処理浄化槽の場合(%)
年度 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61
増加率(対前年度比)  7.6  6.6  4.7  6.1  6.2  4.5  3.9  3.5  2.9  3.5
合併浄化槽の場合 4.5 5.2 6.0 6.6 7.2 7.6 8.2 8.9 9.4 9.8

 岩手県より人口の少ない秋田県の設置基数は約2万基、山形県では6万基に迫る勢いで、特に山形市は東北で唯一、小型合併浄化槽設置者に補助制度を設けている。
 奥羽山脈と北上山地そして長大な三陸海岸を抱える広大な本県の地勢の中で豊かな自然環境を保全し、快適で文化的な住環境をつくるためにも、地域の実情にあった下水道事業、農業集落排水事業、漁業集落環境整備事業、そして個別の小型合併浄化槽等の組み合わせによる生活排水対策の推進が必要である。中でも、比較的安価で、簡単に設置でき、処理効率も他の処理施設に比べ遜色のない小型合併浄化槽は今後大いに奨励し、生活環境の保全ひいては公衆衛生の向上に寄与することが重要である。
 更に、小型合併浄化槽の保守点検基準が近く国から示される予定であり、県においても、新たに浄化槽の指導基準を作成し、より地域住民に密着した浄化槽行政を積極的に推進する必要がある。