岩手県二戸保健所
大内 英雄
浄化槽の将来像はどうなるのだろうかと考えてみますと最近の5年間で県内の浄化槽の設置数は約2,000基増えて12,000基(大部分単独浄化槽)ほどです。浄化槽人口は若干減少して11万人ですが、これらの大部分は単独浄化槽によるものと思われます。
一方、下水道人口は近年の流域下水道の整備もあって13万人と倍加しています。
しかし、下水道整備にはかなりの資金を必要とするところから、20年先の目標でも50%が関の山というところです。
先の事は分かりませんがその時に県内の総人口が変わらないとしても、70万人が下水道からあぶれてしまうことになります。それを1世帯3.7人として割れば19万余りとなります。実際は集合住宅や設置しない世帯もあると思いますが、合併浄化槽の国庫補助制度に弾みがつけば、下水道に吸収されるものを除いても、10年後は今の数倍以上の浄化槽が設置されるのも夢ではないと思われます。
本県の浄化槽設置数が比較的少ないことを考えれば、浄化槽業界は今後の成長を期待する余地は充分にあると言っていいと思います。
浄化槽行政は国が合併浄化槽に補助金を出したことで大きく変わったと思います。今までの様に住民の水洗化の要望に対応しているだけでなく、山紫水明な快適環境を早期に実現して行こうという意図があるし、単独浄化槽の合併化も補助制度の中に組み入れたことから、近い将来単独浄化槽の設置は規制されるものと思われます。この国庫補助制度は先に述べたように業界にとっても大きな需要創出のきっかけになり得ると思います。
このように考えれば、折しも国が音頭をとって家庭用の合併処理浄化槽の普及を奨励していることは浄化槽協会にとっても願ってもないことといえます。浄化槽の「市民権」を確立する切り札とも言える手段を手に入れたからです。これで浄化槽の普及について大手を振って各市町村を説得しにいけるわけです。承知のとおり合併浄化槽の補助は各市町村が受け皿にならなければならないシステムですから各市町村の理解を得ることが必要となってきます。
今後の浄化槽協会の役割はそういう意味からも重要です。業界の資質の向上を図り、利用者が安心して任せられる体制を早期につくり上げて行くことが浄化槽の普及にとって必要と思われるからです。また、施工から保守点検まで一貫して責任を持っていくためには浄化槽施工業者との協力も考えられ、そういった利用者の便宜を図って行くことが浄化槽の「市民権」を確立し、業界の発展も期待できるものと思います。
今まさに浄化槽業界は自らの肩に自らの未来像を抱えているのだと思います。
肩ひじの張ったことを書いてしまいましたが、今後の合併浄化槽の普及については行政側の役割も重要ですが、それにも増してこの事業を成功させるためには業界のマンパワーに期待されるところが大きいと思います。
閑話休題
最近、浄化槽も爆発することがあるということを知って驚いています。
そこは、200人槽規模の合併浄化槽ですが、ある時突然、50センチもある鋳鉄製のふたが爆発音とともに飛び去り、あたり一面白いけむりと強烈な刺激臭に包まれるという事件がありました。
管理者の話によると、以前は放流水の消毒に次亜塩素酸系のものを使用していたが、最近イソシアヌル酸系の消毒剤に切り替えて使用していたところ、放流ポンプが故障して消毒筒の上まで水が上がっていたということでした。浄化槽は変わった様子もないので、消毒剤どうしが溶けて反応したものだろうということになりましたが実験はしていません。しかし幸いにも被害者がなくてほっとしたものです。消毒薬も場合によっては爆発物になるということなのでゆめゆめ軽んずべからず。
ところで、今年の月間浄化槽7月号の65頁に管理会社に勤務する広川氏の投稿が掲載されていますが、おもしろく拝読しました。「浄化槽の管理とは」という表題で、筆者が汚くて嫌だった浄化槽の管理を愛情を持って行うようになった経緯をユーモアあふれるタッチで感動的に描いています。筆者は「とにかく可愛がってやれば、自然と技術も身に付いていき、愛情の上に技術が備わったとき点検から維持管理という言葉に変わる」と言って締めくくっています。一読の価値あり。
保健所の担当者の仕事の範囲を少し紹介しますと、所管している法律は浄化槽法を始めとして廃棄物処理法、水道法、理容師法、美容師法、クリーニング業法、旅館業法、公衆浴場法、興行場法、環衛法、ビル管理法、温泉法等々16以上あり、また保健所によってはこれらに加えて公害関係法令等も担当する場合もあり、かなり広い範囲をほぼ一人で切り回しているというのが現状です。
浄化槽の設置基数は環境衛生施設数全体から見ればどの保健所でもかなりの比重を占めていますし、仕事の量から見ても浄化槽は比重が高いといえます。
この様な状況ですから、保健所だけでは対応が難しいので、法定検査制度ができたわけです。このことは、業界にとって非常に良かったと思いますし、業界を取り巻く状況にも有利に働いていると思います。
浄化槽行政は国や県や市町村だけのものではなく、検査センター、浄化槽製造業者、施工業者、保守点検業者等全てにおいて連携をとって推進しなければとても成功はおぼつかないわけですから、浄化槽協会の方々には浄化槽行政の一翼を担っているという自覚を持って仕事をしていただければと思っております。
最後になりましたが、協会の方には、ぜひ保健所の方へ足を運んでいただきたいと思います。仕事や商売の事に限らず、何でもよろしいですのでお話をしに来ていただきたいと思っております。
それでは、協会の活躍を大いに期待しつつ筆を置きます。