岩手県一関保健所
松本 実
皆様、あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い申し上げます。
一関保健所管内では、小型合併処理浄化槽設置整備事業(補助金制度)を平成3年度から一関市と花泉町がスタートしており、平泉町では平成4年度から実施する予定です。
そこで、一関保健所管内の合併浄化槽の状況(特に放流問題)について思うことを述べたいと思います。
一関地方の浄化槽設置状況ですが、設置基数は平成2年度末現在、805基(旧構造411基、新構造394基)、単独処理浄化槽652基、合併処理浄化槽153基であります。また、建築用途別では、事務所、作業所等が多く、地域的には市街地に多い傾向があります。
一関市については、人工的に同じ規模の花巻市、北上市、水沢市に比較して設置基数が少ないように思われます。
この理由のひとつに放流についての問題があります。一関市の西部(北上川の西側)の地区は農業用水路が縦横に走っており、浄化槽を設置しようと思ってもなかなか放流同意が得られないのが現状です。
このことから、国道4号線や厳美街道沿いに近年増加している「郊外型レストラン」等の飲食店では、放流管を数キロも敷設するか、「汲み取り水洗便所」で我慢するほかありません。
「汲み取り水洗便所」の場合、必然的に厨房排水は未処理もしくは油水分離槽程度の処理で放流することになりますが、一関保健所には、この未処理の厨房排水による苦情がたびたび寄せられ対応に苦慮する事もあります。
一関市では、小型合併処理浄化槽設置整備事業を実施するにあたり、小型合併処理浄化槽であれば、市が管理している道路側溝に放流を認めることとしました。
さらに、改良区管理の水路に放流できるようにならなければ、小型合併処理浄化槽の普及はままならないことから、土地改良区に対しても、生活雑排水を未処理で排水している現状からすれば、現在の処理能力の高い合併浄化槽であれば問題がない(逆に河川に良い結果をもたらす)ので放流を認めるよう、再三にわたって説明しているのですが、なかなか理解してもらえないようです。
土地改良区が、農業用水路に放流を拒んでいる理由のひとつに窒素の濃度があるようです。改良区の言い分では、小型合併処理浄化槽ではBODは除去できるが、窒素分は処理できない、かえって増加する(し尿の窒素分が増加する)ということのようです。現在、これに対する反論を検討しているところですが、なかなか良い説明ができなくて困っているところです。
先般、一関保健所と管内市町等で構成する「一関地方環境衛生・公害業務担当者協議会」が行った住民意識調査「ごみ減量化・生活排水対策推進モデル調査」では、80%の人が、「家庭から出る生活排水が河川の汚濁に影響している」と考えており、河川の汚濁に対する対策として「公共下水道、浄化槽の整備」と考えている人が50%以上いること、さらに、40%の家庭が将来合併浄化槽を設置したいと考えていることがわかりました。
反面、浄化槽設置の問題点として「設置費用がかかる」50%、「維持管理が大変」25%、「放流先がない」20%であり、放流の問題が第3位に位置していることがわかりました。
このことから、小型合併処理浄化槽の設置普及のためには、住民に対する小型合併処理浄化槽設置整備事業の周知のほか、河川等水路管理者に対する十分な説明と理解を求めることが重要であると考えます。今後、市町等関係機関と連携をとりながらそういった方面の指導なり啓蒙を行っていきたいと思います。