岩手県二戸保健所
佐々木 健司
新年あけましておめでとうございます。
私は、二戸保健所で初めて環境衛生業務に携わりもうすぐ丸2年を迎えようとしていますが、浄化槽業務はかつての担当であった食品衛生業務とは業務内容が全く異なり、浄化槽の構造基準や人槽算定など現在も浄化槽業務を含め環境衛生業務については、日夜?勉強している状況です。業務の中で建築確認などで書類審査を行っているわけですが、1件ごとに微妙に書類の内容が異なっていたりしていて、1件1件の事例を積み重ねて頭に叩き込んでいるという具合です。これからも、浄化槽検査センターの高橋所長さんをはじめ、保守点検業や施工業の方々など皆様からいろいろな情報を吸収していきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
1.二戸保健所管内での浄化槽設置状況
当保健所での浄化槽の設置状況をみると、平成10年3月末現在の設置基数が1,169基と県内でも少ない方ではないかと思いますが、平成8年度から二戸市と一戸町で、平成9年度から残りの町村(軽米町、九戸村、浄法寺町)で合併処理浄化槽設置補助事業が始まったことを契機として、合併処理浄化槽の設置がかなり進んできたようです。
すでに平成10年4月1日から12月末までの二戸保健所管内の浄化槽設置基数は163件の設置があり、うち単独浄化槽は5件です。合併処理浄化槽の設置率は97%で、単独浄化槽設置の5件の内訳も、下水道供用開始区域内など訳ありで設置されたものです。
このような合併処理浄化槽設置率の向上の背景には、厚生省・県などの指導の結果、浄化槽工業会が単独浄化槽の製造を止めたことが大きな原因となっているとともに、浄化槽設置者が環境への配慮を意識したのではないかと思います。
2.浄化槽業務の効率化
浄化槽業務は浄化槽設置時の審査で、地方振興局土木部と保健所での文書のやりとりなどでどうしても時間がかかります。浄化槽の設置を望む方々は早く浄化槽を使って快適な生活を送りたいと考えていますから、書類上のやりとりでの時間ロスは設置者に不便をおかけしていることになります。
そこで、そんな状況を踏まえ保健所でコンピュータシステムに大変詳しいY氏(現在二戸保健所勤務)やS氏(現水沢保健所勤務)が浄化槽業務のデータベース化を図り、今まで時間ロスが大きかった業務を大幅に改善しました。
今後は、このデータベースに浄化槽法定検査結果をリンクさせてどの浄化槽が法定検査を受検し、どの浄化槽が不適正であったかなどのことが簡単にわかるようになれば、さらに業務の効率化が図られるのではないかと、空想しています。(私自身、コンピュータシステムに詳しいわけではなく他人まかせであること、浄化槽検査センターさんがご使用のデータベースと私どものがリンクするかなどいろいろと問題があると思います。)
でも、近い将来に実現しないと浄化槽の設置数の増加に業務が追いつかないという事態になっては困ってしまいますね。皆さんのご協力をお願いします。
3.水道水源と浄化槽(下水処理)
私は、昨年11月から12月に水道関係の研修を受けてきました。水道について30人近くの講師の方々から最新の講義をききました。そのような中で、水道水源と浄化槽などの下水処理は大きく関わっていることを再認識しました。
水道の浄水設備は、水質が悪くそのままでは飲料水にできない原水(河川水、地下水、湖沼水など)を水質基準に合った飲料水に処理します。この浄水設備は原水の性質によって処理方法が変わります。二戸周辺では原水の水質が良い?のでオゾン・活性炭処理など高度な水処理は行われていません。
一方、研修で衣食住を共にしたある関西人(O氏)の話では、関西、特に大阪や神戸周辺の飲み水の水源は「淀川」しかないとのこと。淀川は琵琶湖から大阪湾に流れている川で大阪や神戸周辺では唯一の大河川なのです。淀川では上流から順番に飲料水の原水として取水しますが、下水処理の放流先もまた淀川になっています。
したがって、淀川の最下流から飲料水の原水を取水するO氏の水道事業体では、その飲料水原水の30%から40%が下水ということなのです。こんな話を聞くと大阪では水も飲めないなんていう気持ちになりますが、このような都市の浄水処理はオゾン・活性炭処理を取り入れた高度処理を行っているため、私たちが岩手で飲んでいる飲料水とほとんど変わらなくなっていると言います。都会の水というと塩素臭い、カビ臭いという苦情が住民から絶えなかったそうですが、高度処理でそのような苦情がほとんどなくなったそうです。
そんなことを言われたからか、研修先の東京の水も10年くらい前に飲んだ臭い水から臭くない水に変わったことに気づきました。皆さんも東京や大阪に行ったら蛇口の水を飲んでみてください。変わったことに気づくと思います。
このように川は飲料水の水源であるとともに、下水処理後の放流先でもあるのです。
ですから、生活雑排水をそのまま流すのではなく下水道や合併処理浄化槽を通して流すということ、また、これに甘んずることなく窒素やリンの低減化ができる処理方法への転換などの対策が必要になるということを痛感しました。
そこでさらに合併処理浄化槽の設置を推進するためには、浄化槽を設置する時点から浄化槽の営業の方々が設置者の方々にその環境への配慮を説明していただくことから始まって、保健所でも情報提供を行っていきたいと思います。
最後に、私が受けた講師が「もっと水道法第43条を活用しなさい。」と言っていました。
水道法第43条というのは、「(下流の)水道事業者等は、水源の水質を保全する必要があるときは、(上流の)県・市町村長などに対して水源の水質汚濁の防止について物申すことができる。」(ちゃんとした条文は読んでください。)というものです。
皆さんもこんなことを言われないように日夜浄化槽の設置、保守点検などにいそしみましょう!