特定地域生活排水処理事業の普及に向けて
-まず「浄化槽ってなぁに??」から始めよう-

岩手県環境生活部資源循環推進課
廃棄物対策係 主事 藤 原 隆 博


 (社)浄化槽協会及び関係者の皆様には、いつもお世話になっております。
 私は、県庁にて主に「特定地域生活排水処理事業」(以下「特定事業」と略。)の推進を担当しています。浄化槽事務に携わって2年目になるわけですが、この事務を担当する前までは、正直申し上げて「浄化槽ってなぁに??」と、その存在や仕組すら全く知らなかったところです。
 しかしながら、合併処理浄化槽に対する注目度が飛躍的に高まるという時代の流れの中で、県内全59市町村が補助事業を開始するという記念すべき年に担当となり、さらに今年度において、本県で初めての事業実施となった特定事業のスタートに立ち会うこととなったことは、誠に光栄なことであり、これも何かの縁であろうかと思っております。
 ここで、特定事業の概要をご説明しましょう。従前の補助事業は、個人が合併浄化槽を設置する際に、市町村から補助金を支出するシステムでした。これに対して特定事業は、(一定の要件を満たした)市町村が自ら事業主体となって各家庭に合併浄化槽を設置し、下水道などと同様に利用者の方々から使用料を頂くことにより、浄化槽の維持管理を行うというシステムです。
 この事業を導入することにより、浄化槽の計画的・面的整備が図られ、これまで未処理のまま垂れ流されていた生活排水の浄化が進むとともに、市町村が責任を持って維持管理に関与することにより、法定検査率の向上及び確実な維持管理を図ることができます。そして何よりも、この事業のメリットは、個人設置型に比べて導入にかかる自己負担額が大幅に安くなることにあります。
 近年の地方財政の逼迫に伴い、公共事業見直しの機運が高まったことや、都市部における水洗化が一段落しつつあって、今後の整備は住居散在地域が中心となる等の事情から、各市町村ではより低コストで効率的な生活排水処理を行うため、全体計画の見直しを行っているところです。県においても、平成22年度末までに汚水処理施設整備率80%を目指すという、壮大な目標を掲げております。
 特に、本県のように住宅が散在し、人口密度の低い地域においては、管渠が不要で短期間のうちに供用開始できる合併処理浄化槽は、きわめて有効な汚水処理方法と考えられており、整備率目標達成の切り札としても大きく期待されています。
 このため、つい最近までは全国でもわずかな市町村しか実施していなかった特定事業が、一転して大きな注目を集め、本県においても5つの町村が事業開始の名乗りを挙げることになりましたが、これも時代の流れというものでしょうか。
 集合処理方式と個別処理方式とは、それぞれの地域によって向き不向きがあります。明らかに集合処理に向かない住居「散在」地域において、集合処理方式のみにこだわることは、貴重な時間の浪費と税金の「散財」につながりかねません。
 「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」とは兵法の言葉ですが、まずは市町村の担当の皆様が、各処理方式の特性と自分の町の姿をよく知り、どの処理方式がわが町に最も適しているかを、改めて考え直す必要があるでしょう。そのため、現在県と市町村との間で勉強会を設けながら、諸課題についての検討を進めています。
 また、最近でこそ浄化槽も少しずつ知名度を上げてきましたが、実際のところ、「浄化槽とはどんなものなのか」ということは、あまり一般には知られていないようです。浄化槽の普及を図り、川をきれいにするためには、まずは県民の「浄化槽ってなぁに??」という素朴な疑問に、よりわかりやすく答えていくことが求められています。
 浄化槽は、ただ設置するだけではなく、正しい使用方法と適正な維持管理があってこそ、その持てる機能を発揮し、きれいな水を流すことができます。今後の浄化槽の普及促進にあっては、浄化槽を一番よく知る専門業者の皆様の役割が一層大きくなるであろうと思われます。関係者の皆様のより一層のご協力を、改めてお願いする次第です。