より浄化槽をわかっていただこう

岩手県環境生活部資源循環推進課
 資源循環担当課長 谷藤長利


 ここ数年、毎年およそ2千基ほどの浄化槽が岩手県内で新たに設置されており、浄化槽が汚水処理に果たしていく役割はますます大きなものとなっています。
 浄化槽は、生活排水をきれいにし、私たちに清潔で快適な生活を与えてくれますが、しかし、一方で、浄化槽についてこんな話を聞くこともあります。かっての単独処理浄化槽のイメージからなのでしょう、「処理しても黄色い、し尿臭い水でしょう。」とか、また、浄化槽の性能を理解している人でも、「維持管理が個人任せだから、検査や保守点検が十分とは言えないでしょう。」などです。
 このような浄化槽に対する「負のイメージ」は、これまでの関係各位の努力に加えて、設置費に対する公的な補助制度や市町村設置型の浄化槽整備などによって、だいぶ解消されてきましたが、浄化槽がさらに理解を得て一般に普及していくためには、「負のイメージ」となる誤解を招くことのないよう、不断に努力を続けることが大切ではないでしょうか。

 私たちが行動を変えるとき、その過程で、「聞いたことは忘れる。」、「やったことは覚える。」、「気づいたことはできる。」というように、人は、次第に自分の知識・経験を実際の行動へと移していくとのことです。「汚物が流れ込んでいるので蓋を開けるのも嫌だ。」と話している浄化槽管理(設置)者に、無理やりとはいきませんが、点検や検査の際に、それとなく浄化槽の中を見ていただくなど、日常の作業、活動のなかで管理者の皆さんに、浄化槽のしくみや特性を理解していただく工夫をしてはどうでしょうか。
 こうすることで、浄化槽に親しみを感じ、大切に考えていただければ、スムーズに保守点検や検査もでき、浄化槽の機能維持が図られるとともに、ひいては浄化槽に対する「負のイメージ」も払拭していけるものと思います。

 私が浄化槽を担当したての頃「浄化槽はいきものを飼っているのだから、そいつが働きやすい環境を整えるのが維持管理だ。」と先輩から言われたことが、私の浄化槽への気づきだったように思います。
 このように、浄化槽管理(設置)者の皆さんに、良く知っていただく、気づいていただくきっかけを提供することも、浄化槽に関わる私たちの役割ではないでしょうか。

 「水清く緑ゆたかな いわての環境」を将来に引き継ぐ一翼を担う責任として、さらに普及する浄化槽の機能を十分に発揮させること、そのためにも、浄化槽への理解を広めていく努力、工夫を続けていきたいものです。

 岩手県は清らかな水や緑にあふれた自然豊かな地といわれます。
 しかしながら、こうした「みず」や「みどり」は、人が適度に手をかけることをやめた途端、そのときから汚濁や荒廃が始まっていきます。
 自然が本来持っている治癒力を十分に発揮させることができるしくみを整えていくのが、そこに暮らす私たちの責任だと思っています。
 汚してしまった水や、そのままでは汚れを撒き散らす汚物を自分の庭から出すときには、できるだけ自然の治癒、浄化する力の支障にならないようにして還してあげることが必要で、浄化槽はその役割を果たせるものといえます。
 こうした意味からも、岩手県の河川や住宅の事情を考慮すると、浄化槽の果たす役割は大きく、ついては、浄化槽の機能が十分に発揮されるように、保守点検や維持管理に気配りをしていかなければなりません。
 浄化槽は「いきものを飼っているんだぞ。そのいきものが働きやすい環境を整えてあげることが維持管理、保守点検なのだ」と、先輩からよく言われたものです。
 このことを、浄化槽管理(設置)者のみなさんに、良く理解していただくことに、努力、工夫をしていきましょう。