「岩手県における浄化槽の役割について」

岩手県県土整備部下水環境課
技術副主幹兼主査 菅原弘行


 はじめに
 会報「みず」へ投稿する機会をいただき、大変感謝申し上げます。
 昨年度、浄化槽事業が環境生活部から、農業集落排水事業が農林水産部から県土整備部に移管され、下水環境課で担当しています。今回、この場を借りまして、浄化槽事業の県の取り組みとこれからの浄化槽に役割についてご紹介させていただきたいと思います。

 1.「いわて汚水適正処理ビジョン2004」について
県では、県全体の汚水処理計画である「新・全県域汚水適正処理構想」を見直し、平成17年2月に「いわて汚水適正処理ビジョン2004」を策定しました。これまで掲げていた平成22年度末汚水処理人口普及率は引き続き80%を目標としていますが、浄化槽のシェアーは5.7%から16.4%と大きく拡大されたところであります。その設置基数は平成16年度約2万2千基だったものが、平成22年には約5万6千基と約2.2倍に増える見込みであります。その一方、下水道は58.6%から52.8%に、農業集落排水にいたっては13.5%から8.8%に縮小しました。

浄化槽整備が拡大した大きな要因は、①今後、下水道整備が市街地から、その周辺部に拡大されていく中、山間地域に適した経済的、効率的な整備手法である浄化槽に移行されてきたもの。②浄化槽の処理機能、維持管理が大幅に改善され、確実な処理施設として信頼性が高まってきたことなどが考えられます。
また、近年、個人設置型から市町村設置型の補助に移行する市町村が増え、個人負担が軽減されたことで住民ニーズが高まり、設置基数が増加している状況にあります。

 2.浄化槽の維持管理について
本県においては、これまで、浄化槽の維持管理は個人の管理に委ねていたところが多く、その信頼性が薄く、更に法定検査も確実に履行されていなかったと感じています。特に11条法定検査の実施率から見ても、平成15年度においては50.5%と、おおよそ半分でした。それが、岩手県浄化槽検査センターさんの努力と工夫もあって、平成17年度には69.1%、平成18年度は80.1%に達する見込みです。このように検査率が高まることは、浄化槽の信頼性が高まることであり、より一層、浄化槽に対する県民ニーズが増えるものと期待しているところです。

 3.浄化槽PFIについて
近年、急速に市町村設置型が導入される中、浄化槽PFI事業が普及しつつあります。全国的には平成16年に福岡県の香春町が導入したことから始まり、本県でもこの4月から紫波町において浄化槽PFI事業を導入しました。昨年度、県では浄化槽PFI研究会を立ち上げ、主だった市町村とその仕組みや、プロセスなど検討したところであります。その中で、①整備が計画的に進められること、②ある程度コスト縮減が図れること、③市町村の事務量が軽減になること、④地域活性化につながること、⑤水質保全が図られること等が期待できることから、県内の市町村において具体の導入検討が始まっているところです。

 4.さらなる展開について
また、本県のような山間地域で集落が点在しているところに、個々の浄化槽ではなく、それらをまとめた大型浄化槽を導入できないか検討を進めてきました。「いわて汚水適正処理ビジョン」を策定する際に、それまで807ヶ所あった集合処理が261ヶ所に縮小したことから、集合処理に至らなかった20人から200人程度まとまっている地域を対象に導入出来ないかを考えております。このような地域に適した大型浄化槽が、今後大いに増えることを期待するものです。

 5.今後の浄化槽に求められるもの
最後に、PFI事業を初め、各地域で取組んでいる管理組合のような形で維持管理を適切に行っていくことが、地域の水環境、住環境に大きく信頼され、貢献していく施設になるとともに、それが浄化槽の普及につながるものと考えています。

県では、平成22年度末汚水処理普及率80%を達成するためには浄化槽整備の促進がますます重要であり、浄化槽の抱える様々な課題について積極的に取組んでいきたいと考えています。今後とも関係機関のみなさま、県民の皆様のご協力とご理解をよろしくお願い申し上げます。