「浄化槽事業に係る平成21年度の取り組みについて」

岩手県 下水環境課
主査 古澤 勉


  はじめに
 この度は、社団法人岩手県浄化槽協会会報「みず」へ投稿する機会をいただき、感謝申し上げます。
 当課では、従来から所管していた下水道事業に加え、平成17年度に環境生活部資源循環推進課から浄化槽事業が、農林水産部農村建設課から農業集落排水事業が移管され、「汚水処理事業」を一元化して執行しております。
 当課の業務指標として、県の汚水処理構想である「いわて汚水適正処理ビジョン2004」に掲げる「平成22年度末の汚水処理人口普及率80%」がありますが、平成20年度末で計画値74.4%に対し、実績値70.2%と計画値をかなり下回る実績となっており、中でも浄化槽処理人口が計画値14.3%に対し実績値10.2%と特にも伸び悩んでいる状況です。
 このことから、浄化槽処理人口向上に資するため、平成17年度には「これからの浄化槽事業のあり方を考える~浄化槽PFI事業導入ガイドライン(案)~」をとりまとめたことや、浄化槽整備促進の課題となっていた「放流先が確保できないケース」への対処として、平成19年度には「浄化槽放流水の地下浸透に関する指導要領」を策定する等取り組みを行ってきました。
 また、浄化槽処理人口の向上と同様に、今後益々重要となってくるのが「浄化槽の適切な維持管理」と考えております。
 これらのことから、「浄化槽処理人口向上(浄化槽整備促進)」と「浄化槽の適切な維持管理」のために、今年度取り組んだ内容について紹介します。

1 平成21年度岩手県浄化槽担当者会議等について
 この会議は、浄化槽の適切な施工及び維持管理のため、関係機関の連携、情報共有を図ることを目的として、浄化槽行政関係担当者を対象として開催しました。
 議題としては、浄化槽補助事業実施に関する事項、浄化槽維持管理に関する事項、浄化槽関係業務に関する提案議題等幅広い内容での会議となりました。
 また、参加者から、このような会議の他に実際の浄化槽を見ながらの現地研修を開催して欲しいとの要望があったことから、別途「浄化槽維持管理研修会」を開催した次第です。
 この研修会は、浄化槽の適切な維持管理推進のため、浄化槽行政関係者が技術的知識を習得することを目的として、県内4会場(洋野町、宮古市、奥州市、紫波町)で開催しました。
 研修内容としては、会議室研修と現地研修の2部構成とし、会議室研修では、開催地となった市町村の浄化槽事業概要についての説明、開催地所管保健所からの浄化槽設置状況等についての説明、社団法人岩手県浄化槽協会からの浄化槽の維持管理等に係る基礎的な講義を受けた後、現地研修として浄化槽設置状況を確認しながら、浄化槽の特徴について研修を行いました。
 なお、本研修は延べ100名を超える参加者があり、アンケートの結果、好評でありましたので、来年度も開催する予定としております。

2 浄化槽出前講座について
 この講座は、浄化槽の普及啓発の一環として、地域の教育活動への支援を図るため、小学校における「総合的な学習の時間」等を活用して実施しようと、今年度から計画しているものです。
今年度は、久慈市と岩泉町の小学校で開催しましたが、受講した小学生は、微生物による汚水処理に興味を示すなど、浄化槽の水環境に対する役割について理解してもらったと感じております。
小学生を初めとする子供たちが浄化槽に興味をもってもらうことは、今後の水環境保全の取り組みに繋がるものと期待していますので、この講座についても継続して実施していければと考えております。

3 浄化槽普及促進チラシの配布について
 浄化槽普及啓発の第一歩は、「浄化槽」がどのようなものであるか理解していただくことから始める必要がありますが、研修会や勉強会、あるいは環境関連イベント等を開催してもなかなか参加していただけるものではありません。
 そこで、浄化槽がどういうものか明確には分からなくても、河川等の水環境保全のために、トイレ排水や家庭雑排水を処理する必要があるということを強調し、その一つの手法として浄化槽設置があるという意図がイメージできるように「快適で環境にやさしい水洗トイレにしましょう!」というフレーズのチラシを作成しました。
このチラシを全市町村に配布しましたので、広報誌や自治体回覧板等に掲載する等浄化槽普及啓発に活用いただければと考えております。
なお、裏面には水洗トイレにしたことで、孫が泊まりに来ることになり、喜ぶお爺さん、お婆さんを表現した4コママンガを掲載するなど遊び心も加えております。

おわりに
 本県の汚水処理施設整備については、今後人口散在地域の割合が多くなってくると考えられることから、汚水処理人口普及率向上のためには、浄化槽の整備促進が今後ますます重要になってくると考えています。
 そのためには、内在している課題を整理し、一つ一つ解決していくことが重要なわけですが、行政だけでは解決できないことも多々あると思います。
今後ますます、社団法人浄化槽協会を始め、浄化槽設置業者、保守点検業者、清掃業者等浄化槽関係者の皆様にはご理解、ご協力をいただくとともに、併せて、浄化槽整備促進に係る課題や問題、あるいは解決策の提言、意見等をいただければと考えておりますのでよろしくお願いします。