岩手県環境生活部資源循環推進課
主査 小澤 豊和
新年明けましておめでとうございます。公益社団法人岩手県浄化槽協会及び会員の皆様には、日ごろから県民の皆様への浄化槽の普及啓発と適正な維持管理に御尽力を賜り、感謝申し上げます。さて、東日本大震災津波から本年で3度目の正月を迎えることとなりました。浄化槽を取り巻く情勢についてはこの震災を機会に大きく変化しました。今回は、震災の教訓と今後の日頃の備えなどについて寄稿させていただきます。
1 東日本大震災発災時の教訓
東日本大震災津波の影響から、沿岸地域を中心に仮設住宅・仮設店舗での浄化槽整備が進められました。これらの浄化槽設置基数は、震災当初では746基(平成23年度末)が設置され、被災地における汚水処理の中心を担いました。この仮設住宅の浄化槽は、地上設置型の浄化槽が62%、半地下埋設型の浄化槽が36%を占めるなど、比較的簡易に整備できる形態が採用され、「建設期間が比較的短く、速効性がある」ことが証明されました。
しかしながら、高所作業を伴うため保守点検や維持管理に支障がでるケースや、利用者が浄化槽の使用に不慣れなことに伴う汚濁水の排水や保守点検・清掃の遅延などに伴う放流水の水質の悪化など新たな問題も発生しました。
こうした課題に対して、貴協会が中心となり、仮設浄化槽の維持管理上の課題などを検証されるとともに、適正な維持管理と住民への適正な利用の観点から、啓発用チラシを作成・配布するなど、未曽有の災害のなかにあって、迅速かつ的確な対応とともに、被災地の公衆衛生が確保されたことについては、県としても貴協会及び貴会員の皆様の御尽力によるものと考えております。
しかし、この教訓は、後世に継承していくことがなによりも大切です。改めて被災地域における浄化槽の維持管理上の対応と課題などを後世に残していく取組を進めていきたいと考えています。
2 大規模災害に備えた対応
環境省による調査の結果、東日本大震災津波で被災し、使用不能となった浄化槽は調査対象の浄化槽のうち3.8%にとどまり、浄化槽が比較的災害に強い汚水処理施設であることが確認されました。こうした知見を踏まえながら、環境省において「災害時の浄化槽被害等対策マニュアル」の改訂を実施しています。
主に「災害予防」、「災害応急対策」、「災害復旧・復興」等の基本的な対応等について整理されており、今後の災害に備えた「災害予防」が重要であることが明記されています。この項目では、地方自治体は、災害に備えて次に掲げる取り組みを進めることが有効と提言されています。また、災害時における浄化槽の被害状況の把握や、応急処置・復旧への協力等に関する連絡網の作成等、情報伝達の体制を確立し、定期的にこれに基づいた情報伝達を行う等、内容を確認することが必要となっています。
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