「浄化槽法の改正について」

岩手県中部保健所 環境衛生課
主任  水本 清教



1 はじめに
 公益社団法人岩手県浄化槽協会の皆様には、合併処理浄化槽の普及啓発並びに浄化槽の適正な維持管理の推進に御尽力いただくとともに、保健所の浄化槽業務に御協力いただき感謝申し上げます。
また、協会発足から50周年を迎えられましたことを心からお祝い申し上げます。
さて、浄化槽法の一部を改正する法律(令和元年法律第40号)が令和元年6月19日に公布され、令和2年4月1日から施行されることとなりました。改正法の施行に向け、環境省が設置した検討会により具体的な内容が検討されていますので、その概要等について説明したいと思います。

2 法改正の背景について
 全国には、平成29年度末時点で、単独処理浄化槽が浄化槽全体の52%残存し環境負荷の低い合併処理浄化槽への転換を進める必要があること及び定期検査(11条検査)の受検率が41.8%と低い水準であり維持管理の指導を強化する必要があることから、改正されたものです。

3 改正浄化槽法の施行に向けた対応方針について
(1)特定既存単独処理浄化槽に対する措置
 知事は、特定既存単独処理浄化槽(既存単独処理浄化槽であって、そのまま放置すれば生活環境の保全及び公衆衛生上重大な支障が生ずるおそれのある状態にあると認められるもの)について、当該浄化槽の管理者に対して除却その他生活環境の保全及び公衆衛生上必要な措置をとるよう助言又は指導ができること等が規定されました。
 法定検査及び立入検査の結果等から、「特定既存単独処理浄化槽に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)に基づいて特定既存単独処理浄化槽を判断していくこととなります。
 
(2)浄化槽処理促進区域の指定
 市町村は、あらかじめ知事と協議し、浄化槽による汚水の適正な処理を特に推進する必要があると認められる区域を浄化槽処理促進区域として指定することができることが規定されました。
汚水処理未普及区域を解消していくため、自然的経済的社会的諸条件からみて浄化槽による汚水の適正な処理を特に促進する必要がある区域を、積極的に浄化槽処理促進区域として指定するものです。

(3)公共浄化槽制度の創設
 浄化槽処理促進区域内に市町村が設置する公共浄化槽制度(住民が同意した場合には、公共浄化槽の使用・接続を義務化)が規定されました。
 公共浄化槽の整備手法は各戸設置を基本としつつ、狭小家屋が密集する等の地域特性から複数戸の汚水をまとめて処理する方が望ましい地域においては共同浄化槽(複数戸の家屋の汚水を1基の浄化槽で処理するもの)も組み合わせて柔軟に整備を進めることとしています。
 なお、既存の市町村整備推進事業によって設置された合併処理浄化槽が浄化槽処理促進区域に含まれる場合には、公共浄化槽とみなされます。
 
(4)使用の休止の届出の創設
 浄化槽管理者が清掃をしたうえで使用の休止を知事に届け出た浄化槽について、保守点検、清掃及び定期検査の義務を免除できる規定が追加され、浄化槽の使用の再開についても届出義務が規定されたものです。
 
(5)浄化槽台帳整備
 知事に対し、浄化槽に関する台帳を作成し管理することが義務化されました。浄化槽台帳の記載事項は、設置に関する情報(設置届出年月日等)、使用に関する情報(使用開始年月日や休止年月日等)並びに法定検査、清掃及び保守点検の実施状況等になります。
 
(6)協議会
 県及び市町村は、浄化槽の設置及び管理に関し必要な協議を行うための協議会を組織することができることが規定されました。
 協議会では、浄化槽管理者に対する支援、公共浄化槽の設置等、浄化槽台帳の作成その他の浄化槽による汚水の適正な処理の促進に関し必要な協議を行うこととなります。
 
(7)浄化槽管理士に対する研修の機会の確保
 保守点検業の登録に関し、浄化槽管理士に対する研修の機会の確保に関する事項が追加されました。
 近年の社会的な要請から処理能力の向上、コンパクト化に伴う技術の高度化が進み、維持管理についても新たな知識や実務上の技術の習得が必要であることから研修が行われるものです。
 
4 おわりに
今回の改正は、個別に説明しませんでしたが、貴協会と保健所がより一層連携して取り組んでいくことが求められる内容となっています。
つきましては、今後とも貴協会及び会員の皆様の御支援と御協力をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。