「創立50周年に寄せて」

公益社団法人 岩手県浄化槽協会
副会長 菊地 昭文


 副会長を仰せつかっております菊地と申します。日頃より当協会の活動に際しまして格別のお引き立てを頂き、この場をお借りいたしまして厚く御礼申し上げます。
 さて私共、(公社)岩手県浄化槽協会は今年度創立50周年の節目を迎えることができました。これもひとえに岩手県当局を始めとする関係機関からのご指導、及び浄化槽関連団体並びに会員企業様等からのお力添えの賜であると、改めましてこれまでのご厚情に感謝申し上げる次第です。
 これまでも私共協会は、公共用水域の水質環境の保全を図るという理念のもと、浄化槽の普及・促進並びに啓発活動に努めてまいりました。それと併せて、岩手県の指定検査機関として、浄化槽の法定検査業務を着実に実行し、現在では全国でも常に検査受検率で上位を占めるまでに至っております。
 水処理に関するデータとして、平成30年度末に全国における汚水処理人口普及率は91.4%となっておりますが、岩手県の普及率は81.6%であり、全国での順位は35位となっておりまして、未だ約20万人の方が浄化槽等の汚水処理施設の恩恵に預かれていない状況です。今後は、下水道等の集合処理整備区域の減少や計画の見直し等により、個別処理である浄化槽の普及余地は、山村部や散居地域を含めまだまだ多く残されているものと考えます。
 また、私共は東日本大震災を経験いたしましたが、浄化槽は地震災害に強いということが震災後の実態調査においても実証されております。建設コストも安価で、短期間で機能を発揮することができ、人口の増減への対応が容易であり、地域の河川水量の確保も図られる大変有用な生活排水処理システムであると思われます。
 一方、世界に目を向けて見ますと、日本では、飲料水は浄化処理されることで生活排水や工場廃水が健康被害を及ぼすことはありませんが、海外ではトイレ整備が不十分なことで水源や土壌の汚染につながり、健康被害を引き起こしています。そして、感染症を防げる衛生的なトイレを使うことができない人が、世界には45億人もいるということです。
 2015年の国連サミットにて採択された、持続可能な開発のための国際社会共通の目標をSDGsと言うそうですが、この中に『安全できれいな水とトイレを世界に』という目標があります。地球上には、世界のすべての人が使える十分な【真水】がありますが、発展途上国等では、上下水道などのインフラが未整備のところも多く、安全な水が手に入りにくいということです。それに比較し日本では、水道を捻れば全国どこでも安全な水が手に入り、トイレに至っては、世界最高水準の技術で多くの機能が自動化されています。同様に、浄化槽の汚水処理能力の技術的向上も目覚ましく、今や旧単独処理浄化槽と同じ容積で、下水道処理水同等若しくはそれ以上の処理水質を実現しております。
 当協会に於きましては、法定検査に関する技術能力向上に努めることは基より、より一歩進んだ浄化槽に関する技術や研究に、稲村所長を始め多くの検査員が、独自のテーマを持って日々研鑽取り組んでおります。そして、例年開催されます全国浄化槽技術研究集会では、これまでも多くの優秀研究受賞の栄誉に輝いているところですし、今後もより一層の努力に期待したいと思います。
 終わりに、これからも私共協会事業に対しまして、関係機関の皆様からの御指導・御鞭撻を賜りますようお願い申し上げますと共に、今後更なる技術・研究能力の向上をお約束し、いずれは海外の水環境の改善にも寄与することを目標とすべく、楚辞ですがご挨拶といたします。