岩手県環境生活部 資源循環推進課
主任 栄 秀憲
1 はじめに
公益社団法人岩手県浄化槽協会及び会員の皆様には、日頃から浄化槽の普及啓発、適正な維持管理にご尽力を賜り、深く感謝申し上げます。また、会報「みず」への寄稿の機会をいただきましたので、浄化槽担当者になって感じたことや、法定検査に関することをお伝えしたいと思います。
2 浄化槽の担当となって
私が浄化槽を知ったのは、県職員として初めて配属された、宮古保健所でした。当時、東日本大震災津波が発生し、多くの家屋等が倒壊したため、応急仮設住宅や仮店舗等の建設による速やかな復旧が望まれていました。通常であれば、浄化槽の人槽算定は、予め用途を決めた上で、「浄化槽の設計・施工上の運用指針(日本建築行政会議)」に基づき、算定されますが、震災時は、設置費用を抑え、速やかに設置するため、通常時よりも少ない人槽で算定する例が見受けられました。そのため、相談を受けた際は、適切に人槽算定をするよう指導をしたことを覚えています。時折、浄化槽の人槽を小さくできないかと相談に来られる方がおりますが、建築物の用途が変わり、浄化槽の処理能力が足りず、処理水質が悪化した場合は、浄化槽の入替えや処理施設の増設等を検討しなければなりません。そうすると、かえって費用がかかることが想定されます。そのため、設置計画の段階で建築物の使用用途と人槽を十分に検討しておくことが重要であると感じました。
3 法定検査について
浄化槽設置者は、浄化槽法に基づき、浄化槽を使用開始してから3ヶ月を経過した日から5か月以内に7条検査、その翌年度以降、年に1回、11条検査を受けなければなりません。11条検査の結果、「不適」となり、浄化槽の処理水がBOD120mg/ℓを超過する等、一定の要件を満たす浄化槽については、二次検査の対象としており、令和2年度水質改善提言委員会報告書によると、平成17年度から令和2年度末までに二次検査を受けた施設の建築用途として、「住宅関係」の設置基数が198基と最も多く、次いで「店舗関係」、「作業所関係」の順と報告されています。従来から「住宅関係」では維持管理上の問題が多いことが指摘されており、同委員会が平成17年度から令和元年度までの住宅施設関係における二次検査の指摘項目を整理したところ、「使用方法」に関することとして、排水流入状況に応じたピークカット機能の不適切な設定により、短絡流の発生や二次処理装置への汚泥の流出事例が最も多く見られた他、油脂類や未消化物の流入等、利用方法に関する知識不足等が指摘されています。引き続き利用者に対し周知することが必要と考えます。
一方、「保守点検」に関することとして、「循環比等の過大」による二次処理装置へのSS流出や「送風機の経年劣化」による送風量の低下等が指摘されています。近年は、窒素除去型の浄化槽や従来の型式よりも槽容量が小さいモア・コンパクト型の浄化槽の設置が増えているため、浄化槽保守点検業者の皆様方は、浄化槽管理士研修を通じ、維持管理に関する新たな知識や実務上の技術の取得に努めていただきたいと思います。
4 おわりに
浄化槽は、良好な水環境を保全するために必要な生活排水処理施設であることはもちろん、人口減少等の社会情勢や市町村財政の緊縮を考慮すると、浄化槽による分散型の汚水処理はこれからも増えていくものと思われます。今後とも浄化槽による汚水の適正処理を推進するため、貴協会による御支援と御協力をお願いいたします。