進入経路 駆除方法





  • 左巻き(見分け方)
     ほとんどの貝がモノアラガイのように右巻きであるがサカマキガイは左巻きでそれが大きな特徴となっている。また、この点がサカマキガイかどうかを見分ける時のポイントとなる。その見分け方のポイントは殻の頂点を上にして横から見ると(右の写真右側)口が殻の左側にあるのがサカマキガイです。

  • 淡水産
     つまり塩分濃度が高い海洋には生息できない。

  • 壁面等に付着
     下の写真のように基本的浮遊するのではなく壁面や水草等に付着し這いずり回り生活している。


  • 有肺類
     鰓がなく薄い外套膜を通して水面に出て直接空気呼吸を行う。しかし、当然まったく酸素がないとすぐ死んでしまうが、空気呼吸を行なえないようにフランビンに入れてみると溶存酸素がある内はしばらく生存する。

  • 食欲旺盛
     左の写真のようにビーカーにサカマキガイと汚泥を入れると半日後にほとんど糞に変わる。このように汚泥を食べるスピードが速い。なお、植食性つまり植物性のものを摂取と書いてある本と雑食性と書いてある本があるが浄化槽を見る限り雑食性と思われる。

  • 雌雄同体
     ひとつの貝に雌雄の生殖器を持ち、2匹居れば、互いに精子を交換し受精する事ができる。なお、自家受精、つまり一匹でも受精が特殊な場合には起こることがあると言われています。上の写真のように貝が固まっている所は交尾していると思われます。

  • 繁殖力旺盛
     卵はゼラチン質の卵塊で水草や水路の壁面などに産み付けられる。約2週間で稚貝として孵化し3~4ヶ月で成熟。そして1~2日ごとに卵塊を一個産出する。一卵塊の個卵の数は数十個から100個くらい。産卵の最盛期は夏季ですが繁殖力が強くほぼ冬季を除き一年中産卵する。なお、寿命は約1年と言われている。

  • 夜行性
     日中はあまり動かないで夜になると活動する。浄化槽内では常に暗いので活動の日周期はないようだ。

  • その他
     他の貝に比べて水質汚濁に強く、乾燥、寒さにも強い。また、カンテツなどの吸虫類の中間宿主でもある。


[参考]

 月刊浄化槽1996-10 サカマキガイと小型合併浄化槽
 全国浄化槽技術研究集会(平成11年度)浄化槽検査員研究会(分科会)要旨集
 月刊浄化槽2000-11 サカマキガイの浄化槽への影響と対策







 サカマキガイの小型合併浄化槽への侵入経路は次のように大きく分けられる。

・施工時の張り水から
・清掃時の張り水から
・放流先から侵入
・飼育していた熱帯魚などの水槽(水の交換時)から

 侵入経路の大部分は 1.施工時や 2.清掃時にサカマキガイの生息する水路の水等を使用したことが原因と思われる。特に清掃時に使用したバキュームカーを水張り時にも使用するとすぐ他の浄化槽にもサカマキガイが侵入する。このため、サカマキガイの出現する確率は施工業者、清掃業者、地域により大きな差がある。なお、 4.水槽からの侵入というケースは以前の調査では確認できなかったが、その後、熱帯魚を飼育している住宅(アパート)でのケースや小学校の授業で水路の貝を収集しその後これらの貝を洗い場より処分したため浄化槽にサカマキガイが侵入するケースを確認している。





 これらのことからサカマキガイの侵入の防止には次のような点に留意する必要がある。

・水張りはできる限り水道水を使う。
・水張りに水路の水を使う場合はサカマキガイが生息していないか確認する。
・水張りに水路の水を使う場合サカマキガイは基本的に水路の壁等に付着し生息しているのでポンプの吸込み口を壁面、底部、水草、水面などから十分離す(吸込み口をネットなどで覆うことも必要)。
・サカマキガイが出現している浄化槽を清掃したバキュームカーで他の浄化槽の水張りを行わない。
・放流管の水路への出口(開口部)は水面及び壁面から離し水位の上昇による逆流や壁面を這い上がっても侵入できないようにする。






概要

 水中でのアンモニア(アンモニア性窒素が腐敗タンクとほぼ同じ環境で)がサカマキガイやその卵の駆除に効果が高く比較的安全である。そこで安価で入手が容易な硫安(窒素肥料),消石灰を駆除に使用した。
 また,壁面の処理には硫酸銅を使用した。
 駆除の流れは下記のようになる。


駆除作業1 水中(水面下)には硫安を投入,壁面(水面上)には硫酸銅を散布する
駆除作業2 1~2日後に水中のNH4+濃度とpHを測定し低下しすぎている場合(多量の流入により希釈されている可能性が高い)硫安/消石灰を追加
駆除作業3 5~7日後にも念のため再度駆除作業を行う方がよい
確認1 約2週間後(卵が孵化する頃)サカマキガイが全く見られなければ一応成功
確認2 1~2ヶ月後サカマキガイが全く見られなければ浄化槽内のサカマキガイはほぼ完全に駆除


水中(水面下)の処理

[目的]

 サカマキガイの大部分を駆除するのは比較的容易だが,僅かに生き残っているといずれ繁殖してくる。そこで,効果を確実にするためアンモニア濃度とpHを出来るだけ高めに長く保つことが必要。


[薬品の投入量]

・硫安:約0.5kg/m3 (NH4+-Nとして100mg/l以上)
・消石灰:pH8.5を目安(pHが高いほど効果があるので状況により9.0から9.5にするとさらに効果的である)
・現場でのNH4+-Nの濃度の簡易測定には熱帯魚の水槽用の測定器(鈴研ウォーターアナライザーAでもよい)などがある



[投入時期]

・清掃後に行なうのが槽内に薬品を均等に分散できるのでベター(散気等により十分撹拌)。
・さらに可能な場合は放流口を塞ぎ満水とし点検口付近までアンモニアで処理できればベスト(その時間が長いほど効果的,完全に死角も処理できる)

           



[留意事項]

・出来るだけ使用していない時間帯に行う。例えば日中不在の住宅であれば朝駆除作業を行うのがよい。
・消石灰は入れすぎるとpHがすぐ10~11となってしまうので慎重に。
・作業時有機酸系の消毒剤は消石灰と反応する危険性があるので注意が必要。
・消化を抑えるためばっ気は最小限に。また,浄化槽流入部(嫌気ろ床槽第1室)から濃度が低下するので汚泥移送用エアーリフトにより出来るだけ濃度を均一化。


水面上の壁面処理

[目的]

 水面上の壁面にもサカマキガイやその卵がある可能性があるのでこの部分も処理する必要がある。銅剤は貝には効果があるが卵には効果はない。そこで,硫酸銅を壁面に付着残留することにより孵化した貝を駆除する。


[薬品の投入量]

・硫酸銅(5H2O):約1g/l
・展着剤:適量(均等に散布するため)


[処理方法]
・薬品をハンディタイプの噴霧器(住宅の場合2~3l)に入れ壁面を散布処理する。



その他

・薬品を使用するので放流先等に問題がないか前もって確認する。
・各マスにもサカマキガイが生息していることがあるのでこの部分の処理も必要な場合がある。
・放流先にサカマキガイが生息し浄化槽内に侵入しやすい状況の場合その対策がまず必要。
・硫酸銅以外は全てホームセンターで購入できる。
・薬品類は劇薬もあるので取り扱いに注意。